2-13 夜に
夜、星が町の光で
寮から出るのは規則違反だったが、なかなか寝付けず、気分転換に学園内を歩き回りながら、考え事をしていたのだ。
考え事というのは、貧民街の事であった。
偉大な文明を思わせる帝都にありながら、汚く、醜き貧民街がすぐ横に存在する。その異常さが頭から離れず、分不相応にも、解決策を考えていたのだ。
「貴族は民から税を吸い上げ、私腹を肥やしている。しかも、民が生活するのに最低限の分まで吸い尽くしている。吸い尽くされた者達が貧民街を作る。そう言う政治構造は、前世の王制国家と変わらない。それなら、特権階級をなくすのが良いんだろうけど……」
エルヴィンは独り言をブツブツと述べながら歩いていると、知らぬ間に校門近くを歩いている事に気付いた。
「校門まで来ていたのか……流石に、そろそろ戻るかな」
エルヴィンはそう言うと、向きを変え、寮に向かって歩き出そうとした。
その時、完全に閉められた校門を、こっそりよじ登って、学校内に入る士官学校の学生らしき男の姿が見えた。
その学生は学校内に入り、安堵の溜め息を
エルヴィンと学生は目が合い、暫く無言で立ち尽くした。そして、学生は夜間外出の目撃者を作った事に気付き、慌てた様子で、物凄い勢いでエルヴィンに駆け寄り、エルヴィンの両肩をガッシリ掴んだ。
「おい、お前!」
「はい⁈」
突然やってきた学生に驚き、エルヴィンは少しのけ反った。
「お前……今見たこと、教官達には黙っててくれよ!」
「あ、いや……」
「夜間外出が規則違反、しかも、かなり重大な違反な事は知ってるだろ⁈」
「あぁ……」
「だったら分かるよな⁈ この事がバレたらマズイんだよ! だから……な! 頼む‼︎」
「そうなると、私も共犯になってしまうんだけど……」
「黙・っ・て・て・く・れ・よ!」
肩を掴む学生の手の力が強まり、言葉に強制力が加わる。
学生の勢いに押されたエルヴィンは、断る事も出来ず、軽く頷き、その様子見た学生は安堵した様子で吐息を
「これで、一応は証拠隠滅できたな」
学生は、手の力を弱め、エルヴィンの肩から手を離し、立ち去ろうとした。
しかし、
「そこで何してる!」
巡回の警備員に2人は見付かった。
「ヤッベッ!」
学生は本当にマズイと思いながら叫び、走り出し、エルヴィンも、寮の夜間外出という規則違反を行なっていた為、警備員から逃げ出したが、2人の逃亡先は自然と同じ方向になってしまった。
バラバラに逃げて警備員を撹乱すれば良いものを、ウッカリ同じ方に逃げ出してしまった為、警備員は逃げた2人を迷わず追い掛けた。
「まて! 不良ども‼︎」
蔑称を叫ぶ警備員、それにエルヴィンは内心「誰が不良だ!」と思いながら、逃げ足を速めていった。
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