2-7 異世界にて
異世界の歴史を調べ始めたエルヴィンは、先ず前世には無かった物に触れる事となった。
この世界には魔力という物が存在し、魔力は全ての人類が持っている。そして、魔力を利用した、"魔法"と"魔術"という技術がある。
魔法は、魔力を術式などに経由させ、現象を発生させる技術。
魔術は、魔力を自分の身体に干渉させ、体の機能に変化を与える技術。
魔法は自然現象を操る事に長け、魔術は身体能力を上げる事に長けている。
この世界には、前世同様の技術もあった。
世界3大発明である、羅針盤、火薬、活版印刷である。しかし、それ以降の技術には、必ず魔力が関わっていた。魔導機関、通信装置がその例である。
亜人族やドラゴン、魔獣なども居る事が分かった。
ドラゴンは空軍として、帝国では戦闘機の代わりに軍に配備されており、帝国の空を度々飛行する姿が見られる。
エルヴィンは前世には空想、お伽話の世界の物とされていた技術、歴史、文化が目の前に存在するという事実に心震わせながら、勉強を続けた。
ズィーボルト病院でフライブルク一家の下に、もう1人の子供が生まれた。
子供は可愛い女の子で、テレジアと名付けられる。
オイゲンはエルヴィンの時同様、いや、それ以上にオドオドし、その横でエルヴィンは、テレジアが産まれた事で、不思議な感覚に襲われた。
前世では兄弟が居らず、一人っ子だった為、生命の誕生に立ち会った事がなかったからである。
オイゲンはその時、陸軍准将になっていた。
オイゲンは陸軍少将になった。そして、前の戦いで多大な功績を立てた事により、領地が与えられる事になった。
しかし、そこは領地とは名ばかりの僅かな広さで、更に街や村々は荒れていた。
その領地は魔獣が多く生息しているが故に魔獣の森と呼ばれる森の側にあり、前の領主は面倒だからと言って、その地を放置していた。その為、領地の1番大きな町は、魔獣被害でボロボロで、住民も500人程しか居なかったのだ。
実は、褒美の領地というのは建前で、統治困難な地を任せる事により、オイゲンを軍での出世から遠ざける、という貴族の思惑があったのである。
普通ならば投げ出したくなる土地、しかし、それを見たオイゲンの表情は笑っていた。
「ボロボロでも、領地は領地だ」
オイゲンは
まず、魔獣被害を抑える為、城壁の修繕から始めるのは必然であった。
度々、森から来る魔獣を追い払いながら、その面倒臭さに苦心されながら、他のから職人と労働力を集め、少しずつ城壁を修復させていく。
町の修繕。魔獣の脅威に怯えながらの作業を恐れた町の人々は、最初は渋っていた。
しかし、「見ず知らずの貴族が頑張ってくれている」という事で、参加してくれる人数も着々と増えていった。
更に、オイゲンの正規軍での部下達も修繕に参加して、歴戦の兵達による魔獣退治も功を無し、城壁の修繕はあっという間に終わった。
次に、
その時にはエルヴィンも、前世の記憶を活かして少しアイデアを出した。
町の修繕に並行して、内政についても考えた。
エルヴィンはそこでも意見を出し、最初に種族や身分を問わずに無料で学べる学校を作ることを提案する。
帝国のほとんどの学校では、亜人差別の影響で、人間以外の種族は学べないようになっていたのだ。
言う事には一理あったが、エルヴィンは当初この意見に対する父親の反応を危惧した。「オイゲンも人間族至上主義者なのではないのか?」という不安があったからだ。
しかし、それは杞憂だった。オイゲンはそれを全く反対しなかった、むしろ歓迎した。
オイゲンは種族を問わずに平等に接する人で、部下の獣人族達が学び舎に通えないことを
この時、エルヴィンは改めて、この父を尊敬する事が出来た。
その後、エルヴィンは当分の間、税を軽くすることも提案した。
復興も進んでない町からむしり取っても、大した金にはならないし、領民からも恨まれるからである。
この意見も、オイゲンは納得して聞き入れるのだった。
とうとう町の修繕が終わり、そこには1つの町が復活していた。そして、いつの間にか町は人で溢れていた。
身分、種族を問わない無料の学校や、税が軽いという噂を聞きつけ、獣人族や貧しい者達がたくさん移住して来たのである。
人口はたちまち3万人にまで膨れ上がり、街は活気に満ち始めていたのだ。
この光景を見た、かつての町の惨状を知る者達は、この町の事を奇跡の町、"ヴンダー"と呼ぶようになる。
そしてこの町は、フライブルク男爵領、領都"ヴンダー"となったのである。
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