1-2 大尉と森人の少女
少なくともテントの中に人が居る事実が分かると、彼女は、天幕を上げ、そっと中を覗き、12人程の兵士が談笑している中、4人の兵士がテーブルを囲んでポーカーをしている姿を確認する。
そして、その4人の兵士の内の1人、その兵士の姿を見た瞬間、また、呆れて溜め息を
「本当に居た……」
「大尉!」
しかし、
「う〜ん……なかなか良いの揃わないなぁ……」
大尉は、堂々と気付かぬふりをしながら、黙々とポーカーを続けた。
「大尉、聞こえているんでしょう?」
「よしっ! 引き直そう!」
「目を通して貰わないと困る書類が、沢山あるんですけど……」
「おっ! 今度は良いの揃ったよ!」
「あの……いい加減にして下さい……」
気付かぬふりを決め込む大尉に、
そんな少女の様子に気付いた他の3人の兵士は、恐る恐る、心配そうに2人を見詰めていた。
「仕事から逃げてないで、戻って来て下さい!」
「これなら、今度は勝てる!」
「大尉……」
何度も大尉を呼ぶ
「
テントいっぱいに轟く声量、それを鼓膜に直接くらい、大尉は驚きのあまり固まり、その片耳では耳鳴りが鳴り響いた。
2人を残し、誰も居なくなったテント。
暫くし、耳鳴りが治まった大尉は、テーブルの上にトランプを置くと、ゆっくりとエルフの少女の方を振り返った。
そして、落ち着いた様子でこんなことを言った。
「アンナ、耳もとで大声を出さないでくれるかな? 鼓膜が破れそうだったよ……もし、破れていたら、流石の君でも、上官に対する傷害罪で軍法会議にかけるところだったよ……」
「そんなことで、裁判にかける事なんてできませんよ……そんなことより、早く仕事に戻って下さい!」
大尉によるセンスの欠片も無い冗談に、アンナは呆れながら、そう答えるのだった。
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