第56話 焼き芋

「焼き芋焼こうぜ!!」


 やっと秋っぽくなってきた頃、投児がそんなことを言い出した。

焼き芋かぁ・・・あれ?そういえばやり直ししてから一度も食べて無いような?


「焼き芋~?ですか~?」


「雅ちゃんは食べたことある?」


「無いですわ~」


 雅ちゃんはガチお嬢様だからね、ちゃんとしたスイーツとかしか食べたとないかも。


「ボクも無いかな」


 というか家ではボクが自炊しているから間食する余地がない。

仕事でお菓子を貰ったりするけど、その場で少し食べるだけで持って帰らないようにしている。

前回の男だったボクは太りやすかったからね、今のボクは太りにくいけど油断ダメ。


「この前爺ちゃんの家でやったんだよ焼き芋!それがめちゃ美味くて!みんなもやろうぜ!」


 と投児はやる気満々・・・だけど、ボク達はまだ小学一年生、勝手に火を使ったりしたらダメだ。


「誰か大人の人に見てもらわないとダメじゃない?」


 ボクの代わりに公太郎が聞いてくれた。


「大丈夫だって!おれたちもう小学生だぜ?やれるって!」


「なるほど、ではトウジ一人で叱られてくださいね」


 最近仲のいい学も投児には付かないようだ。


「ええ?!おれたちだけでやるのが面白いんじゃないか!」


 しかし誰も投児に賛同はしない。


「無断で焚火するのは犯罪だもんね」


 どこかに許可を取らないとダメだったはず。


「え?!ハンザイ・・・?!や、やめよう!ハンザイはヤバイ!!」


 犯罪と聞いてビビった投児は全力で日和始めた。

投児は単純な性格をしていると思う。




 結局、雅ちゃんの送り迎えをしている運転手さんと護衛の二人の男の人に手伝ってもらった。


「もう出来たかな?!」


「まだだね」


 投児と公太郎のこのやり取りが数十回聞いたあたりで焼き芋が焼けた。

栗も焚火に入れようとする投児を公太郎とボクで必死に止めるのは大変だった。栗は弾けるから直火で焼いちゃダメ。


「これが焼き芋~?皮は食べられそうにありませんわ~」


「蒸かし芋なら皮ごと食べられるけどね・・・これは皮が真っ黒だね」


 ボクと雅ちゃんは並んで半分こした焼き芋を食べた。

甘い!久しぶりに甘味を食べた気がする。ウマウマ!

雅ちゃんも口にあってたみたいでニコニコしながら食べていた。


「うーん?爺ちゃんの家で食べた芋のほうが美味かったきがするぞ?」


「初めて食べたときって一番おいしく感じるらしいですよ」


 投児と学も仲良く焼き芋を食べている。

やっぱり仲いいなぁ。


 あぶれた公太郎は手伝ってくれている男の人達と小学生らしくない話をしている。


「へ~佐藤さんはお子さんがいるんですね!まだ3歳ですか!可愛い時期ですよね!」


 小一の会話じゃないよね?ボクが言うのもなんだけど・・・


 焼き芋焼くイベントは楽しく終わったけど、家に帰ったらお母さんに煙臭いって言われた。いつの間にかボクたちは燻製になっていたらしい。

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