第55話 ヴァーチャルな人とデュエット歌う

 運動会も終わり、季節も秋に近づいてきた。

それでもまだまだ暑いのでクラスメイト達は「暑い暑い」と茹だっている。


 ボクはお歌の収録の仕事が入ったので、その日の午後はマネージャーの雪子さんに迎えに来てもらい、収録現場まで移動した。


「今回は今話題のヴァーチャル配信者とのデュエット曲になっています。」


「ヴァーチャル配信者?・・・Vチューバーかな?」


「いえ、今ではユウチューブ以外でも活躍しているのでヴァーチャル配信者と呼ばれるそうですよ?」


 そうなんだ、前回ではずっとVチューバーって呼ばれてた気がするけどな。

やっぱりちょっと違うのかもしれない。





 到着した収録現場に入るとデュエット相手のヴァーチャル配信者さんが居た。画面の中に。


『はじめまして姫宮ユリちゃん!私は今をトキメク北斗七星☆七ツ星ホクトちゃんで~す!!よろしくね!!』


「はじめまして七ツ星ホクトさん、姫宮ユリです。よろしくお願いします。」


 七ツ星ホクトさんはその名の通り、七つの星が瞳の中や髪飾りなどに散りばめられた、星をモチーフにしたキャラクターみたい。

全体的に黄色いイメージカラーで、20代前後の年齢に見える。

声はハスキーで歌ったらカッコいい感じになりそう。


『今回のデュエットは私から提案させてもらったんだ☆ユリちゃんの声とのハーモニー☆絶対良い歌になると思うんだよね☆』


「えへへ、がんばりますね!」


 こうして始まったデュエットソング作り、一応前もって仮歌のデータは貰っていたけど、合わせてみたら何か違うとなってその場で修正・・・ホクトさんが作詞してるらしく、別室に居るホクトさんが書き直した歌詞が送られて来て歌いなおした。

そうしたら今度はホクトさん側も修正が必要になって・・・


 と、かなり時間が掛かってボクの年齢的に帰らなくちゃ行けなくなったので続きは明日やることになった。







 そうして次の日も同じ収録現場に向かうと、明らかに寝てない風なスタッフ達とヴァーチャルキャラ越しでもわかる疲労が滲み出たホクトさんが待っていた。


『ユリちゃん!お願い!最後の修正だからこの歌詞で歌いなおして!お願い!!』


「あ、はい・・・」


 ☆とか入れる余裕も無いくらい修羅場感を出していたので、素直に新しい歌詞カードを黙読で暗記してすぐに録音ブースに入った。

歌詞の内容の感情のニュアンスが少し明るめに変わっていたので、歌に込める気持ちも少し明るくした。





『完璧!流石だよユリちゃん!!あとはこの曲に合わせたダンスを覚えて撮影するっだけだね!!』


「え?」


『え?・・・もしかして聞いてない?』


「はい・・・雪子さん?」


「はい、確認します・・・今回の仕事は歌の依頼としか聞いてないですね」


『ちょっとスタッフー!!』


 ホクトさんは向こうの部屋にスタッフさんを呼んで話し合いをし始めた。





『ごめんさない!ちゃんと連絡が行ってなかったみたい!!だ、ダンスしてくれる・・・かな?』


「雪子さん?これってボクが決めていいんですか?」


「そうですね・・・現場は臨機応変に、がウチの事務所の方針なので大丈夫です!」


「ならやりましょうか」


『ありがとう~~~!!!』







 後日公開されたボクと七ツ星ホクトさんのデュエットダンスソングは大好評だった。

二次元(3D)と並んでダンスして違和感ないボクって、改めて見ると人間離れした容姿してるんだなぁ、と自覚した。



 

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