第52話 不幸太さんと再び共演
「カーット!!・・・」
今日はCMの撮影のお仕事が入っている。
冬に流すやつなので冬服を着てあったかいシチューを食べる内容になっている。
「うーん・・・不川さんの汗が凄くて冬感がきえちゃってるよ!!」
CMの監督が指摘している通り、共演している不川幸太さん(不幸太とあだ名があるくらい不運な中年役者)の顔には大粒の汗がたくさん浮かんでいる。
「いやぁ・・・汗かきなもので・・・」
不川さんは申し訳なさそうに汗をタオルで拭くが、次から次へと汗が噴き出している。
不川さんは去年まで、パッとしない役者だったのだけど、冴えないサラリーマンを主役としたドラマで主演を務めたのが当たり、最近仕事が増えだしたそうだ。
「ごめんねぇユリちゃん、僕のせいで収録終わらなくて・・・」
「いえ、大丈夫です。そうだ不川さん!ボクが汗の止まるツボを押してあげますよ!」
「え?そんなのがあるのかい?だったら頼むよ、自分じゃどうしようもないからね」
ツボは知らないけど、魔法でどうにか出来るはずだ。
ボク不川さんの背中に回り適当に指で突きながら、氷魔法を使い不川さんの服と肌の間の空気を冷やし続けるようにした。
「うおっ!?急に寒くなって来た!!汗が引いていくぅ!」
「撮影再開しまーす!準備おねがいしまーす!!」
撮影が再開されると、不川さんは汗をかくことなく最後まで終えることができた。
「カーット!!オッケーデース!!」
無事に撮影が終わった。よかったよかった。
衣装を脱いでメイクを落としたら、すでに不川さんは帰ってしまっていた。
「あれ?何か忘れているような・・・?思い出せないなら大したことじゃないかな」
「ユリちゃん、不川さんから連絡があって、涼しくなるツボ押してもらってから寒くて死にそうって言ってるんだけど、心当たりある?」
「あ」
慌てて雪子さんに車を出してもらい不川さんの事務所まで行くと、唇が紫色になってガタガタと震えている不川さんが超厚着をして死にかけていた。
ツボを押した事になっていたので、直すツボを押す体で背中を適当に押しながら氷魔法を解除した。
今度から時間制限付きにようと誓った。
後日、不川さんの汗かき体質が治ったと教えてもらった。
氷魔法による荒療治で治ったのかもしれない。
結果良かったけど、下手したら死んでたから気を付けないとね!
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