第43話 お母さんは辛辣

 お祖父ちゃんは和風の豪邸で、みやびちゃんの家と少し似た感じだった。まぁ人力車が走れるほどの廊下ではないけれど。


 立派な庭を見ながら歩いていく。ほへー!無駄にデッカい庭だねぇ。管理が大変そう。

植えてある松が盆栽みたいにウネウネしている。あれはもしかしてお祖父ちゃんがやったのかな?


「あの松はお祖父ちゃんが植えたんだけど、すぐに飽きて今は庭師さんが管理してるのよ。」


「こら順子!ワシの恥をユリちゃんにバラすでない!!言わなければユリちゃんに『お祖父ちゃんカッコイイ!』って言われるかもじゃろ!」


「無いわよ!」


  流石に祖父の盆栽を見てカッコイイ!って言う小1女子は居ない・・・と思うよ?

少なくともボクは盆栽の良さは分からないよ。



 やたら遠い部屋まで案内されて、やっと着いた。

着いた部屋は予想外に洋室だった。フローリングだし、ソファーもある。


「和室じゃないの?」


「歳を取ると地べたから立ち上がるのが辛いらしいわよ。だからソファーも有るし、トイレも洋式なのよ。」


「なるほどー!」


「順子!またワシのカッコ悪い情報を話おって!!和解しに来たんじゃろうが!」


「そうだったわ!」


 そう、お母さんはお祖父ちゃんのダメ出しをしに来たわけではなく、和解しに来たのだ。

結婚を反対していたのを駆け落ちみたいな感じで無理矢理結婚しちゃったから、離婚した後も後ろめたくて実家に連絡すらしてなかったらしいからね。


「・・・お父さん、ごめんなさい。」


「うむ、許す!・・・・・・チラッ」


「・・・」


「・・・おい!例の物はまだか?!」


 例の物?何の事?


「【姫宮ユリ非売品グッズ】をくれる約束だろう?!」


 なんじゃそりゃあ!?


「仕方ないわねぇ・・・」


 お母さんはそう言いながらカバンから、採用されなかったボツ写真やリテイク前のムービーや歌が続々と出て来た。

確かにあれは非売品だね。


 その中にはボクが本気を出し過ぎて聴くと感情が揺さぶられて情緒がオカシクなる・・・らしい危険物うたまで混ざってた。

大丈夫かな?


「うひょー!家宝にするぞい!!」


「還暦過ぎで『うひょー!』とか言わないでよ恥ずかしいわねぇ。」


 うん、お母さんはお祖父ちゃんに対してだけ辛辣!


 シャッ!パァン!!

急にフスマが開かれたと思ったらお婆さんが立っていた。もしかしてボクのお祖母ちゃん?


「うるさいねぇ!・・・おや?順子と百合姫、もう来てたのかい!こっちへおいで!ご飯を用意してあるよ!」


「母さん!ただいま!行くわよユリちゃん!」


「うん!」


「・・・ワシも行くぅ!!」


 もしかしてお祖父ちゃんってお祖母ちゃん達に尻に敷かれてるの?

 

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