第36話 あさよう!第2話の撮影

 突然金髪幼女になってしまった龍次郎は、会社に行くことも出来ずに数日家に引き篭もっていた。もちろんただ呆然と過ごしていたわけではなく、ネットでこの怪現象の原因を調べたり、外出用に子供服を通販で買ったりしていた。


「よし!やっと子供服が届いたぞ!これで外に出られる!」


 金髪幼女になった龍次郎は、届いたばかりの服から値札を取り着替えた。


「流石にそろそろスーパーで食材を買わないと貯金が尽きてしまう!!」


 そう、数日引き篭もっている間に食料を使い果たし、出前を取り始めていた。いつ仕事を再開出来るのかもわからないので食費をそんなに掛けられないと感じた龍次郎は近所の激安スーパーに行くと決意する。


「補導に捕まるわけにはいかないからな。土日なら子供一人でも大丈夫なはずだ。」


 子供服のサイズがイマイチ分からなかった龍次郎はサイズ別に幾つか買っていた。丁度いいサイズの服のセットはタンクトップとショートパンツという夏らしい服装だった。


「服装も完璧!」


 町中でこんな服を着て居た女の子を見たことが有るので最近の流行りも抑えていると自画自賛する龍次郎。



「じゃあ次のシーンは幼女がスーパーで買い物をする所から始めるから。」

「はーい!」


「しかし男っぽい演技上手いねユリちゃん!まるで本当に女の子になった男みたいだね!はっはっは!」

「上手くお芝居出来てて良かったです。」


 ちょっとドキッとしたね。一瞬バレたのかと思ったよ。



 龍次郎は自炊はするけど社畜だったので、そこまで凝った料理は作れない。基本は煮た野菜や肉に鍋の素を入れたり、焼くだけの味がつけられた肉やサラダパックなどだ。しかし今の龍次郎は仕事に行けなくて暇している、時間を掛けた料理を作ってみようかと思っていた。


「ひき肉、玉ねぎ、パン粉・・・卵もだな!」


 ハンバーグに必要な具材をカートに載せたカゴに入れていく。龍次郎はハンバーグが好きなので作ってみることにした。大分昔だけど小学校の時の調理実習で作った事があるのだ。まぁ殆ど覚えていないのだが、一度作っているから失敗はしないだろうと思っていた。


「ありがとうございましたー!」


「しまった!買いすぎたかもしれん・・・この子供の体では家まで買い物を運べるかわからんな。タクシーは・・・ダメだそんな事に金を無駄にできん!気合で持って帰る!!」






「し、死ぬ!重すぎるだろ!指が千切れるわ!!」


 龍次郎は赤くなった指の痛みを取るように振ると、やっとたどり着いたアパートの玄関を開けた。


 龍次郎は早速買ってきたハンバーグの材料で調理を始めた。指の酷使の大きな要因である1.5リットルのコーラをちょくちょく飲みながら作業を勧めていく。


 ちょっと焦げたハンバーグを美味しく食べて、「次はカレーだな!」と笑った所で第二話でのユリのシーンは終わった。その後は3話から出てくる姪っ子の初登場シーンが少しだけある。姪っ子役の女の子は設定では中1だけど、役者さんは高校1年生の女の子だ。中1には見えないけど、ドラマだと大人でも未成年役やったりするから別に問題ないか。


 ちなみにこのシーンが放映された後からしばらく、ハンバーグの材料とコーラがお店から品切れになったという。ユリの謎の力が宿った演技力で購買意欲を刺激してしまったらしい。特にコーラを飲むときのユリの演技が本当に美味しそうに飲んでいたから、視聴者がコーラ飲みたい欲求が溢れ出たらしい。お店からコーラが消えてしまって余計にコーラへの欲求が高まり、それを見た怪しげな商売人達が「商機だ!!」と、パチもんのコーラを売るまでになったそうだ。原因となったユリは自身がそこまで人気の役者だと思っていないので気が付かなかったらしい。

 

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