第16話 前回では友達だった男子

 大分稼げるようになってきたし、プライベートでのセキュリティの問題も考えて、お高いマンションに引っ越そうか、という話になった。


 「や゛だぁ゛~お゛でユ゛リ゛ぢゃん゛ど離れ゛だぐな゛い゛~~!!」


 お向かいの築50年以上立ってそうなボロボロの長屋に住む同い年の男子、大西おおにし大吾だいごがギャン泣きしている。色黒で丸坊主、痩せているけどヤンチャで落ち着きがない男子だ。近所でのあだ名は【野生の猿】。前回ではそこそこ中の良い友だちだった。彼ともう一人の男子しか友達は居なかったけどね。その後ボクが遠くに引っ越して疎遠になったけど。


 今回でもそこそこの交流はある。家が目の前なので幼稚園生の時に何度か遊んだだけだけどね。こんなに大泣きするほど別れを悲しまれるとは思わなかった。


「グスッグスッ!・・・おれ、大人になったらユリちゃんと結婚するのに!なんでユリちゃん引っ越しちゃうの?!」

「え?結婚しないよ?ここは小学校から遠いから引っ越すんだよ。」


 相手は小1(ボクもだけど)だから、単純に学校に近い所に引っ越すと説明した。そして結婚しないと言われまた泣いた。ダイゴはガキ大将的な性格であまり人の話を聞かないで自分のワガママを通すヤツだったから、今も思い通りに行かなくて駄々を捏ねてる。


 見かねたダイゴの父がダイゴを引きずっていって説教を始めた。ボクは引っ越しの準備があるから一度家に戻り、数時間後様子を見に行ったら、何故かダイゴは紐で縛られて木にから逆さまに吊り下げられて泣いていた。


「うちの大吾がすまないね。ユリちゃんが引っ越すまで出来るだけ家の中に縛り付けとくから安心してくれ。」


 ダイゴの父親はしっかりした人で、ガキ大将なダイゴとその弟ショウゴ、ケイゴは父親には逆らえない。ダイゴ父が言うなら大丈夫だろう。


 ちなみにダイゴの弟達もヤンチャだ。次男のショウゴはマセていて、干していたボクのパンツを盗んだ事がある。直ぐに父親にバレて折檻されていた。三男のケイゴは幼稚園で他の園児を叩きまくる事で暴れん坊と有名だ。



 引っ越し当日。引っ越し作業は業者にお願いしたのであっという間に荷物は運ばれていった。ボクとお母さんは荷物を纏めただけだった。


 お母さん的にはお向かいさんはあまり関わりたくなかったらしく、お別れの挨拶もサラッと済ませた。引っ越した後に聞かされたんだけど、お向かいは取り壊して別の住宅を建てる予定だったけど、元々建物が寿命だから取り壊しまでならばタダで住んで良いよと言われて住んでいたそうだ。なのに取り壊しの時になると立ち退きを拒否して居座り続けていたらしい。当然大家さんは何度も立ち退き勧告を出していたそうだ。確かにあの長屋、ダイゴ達の住む所以外は崩落してた。ダイゴ家は父がDIYで補強していたようだ。いつ倒壊してもおかしくない家だったのによく住んでたね。


 ダイゴ父はしっかりした人だと思ってたのに、世間的にはダメな大人だった。流石にそれはボクにも見極められなかった。


 この件をきっかけに人を見る目も養おうと心に決めたのでした。


 


 

 

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