第14話 子役のお仕事

 待望の役者のオファーが来た。ちゃんと事務所に入ってから初の役者のお仕事だ!やったね!ちょい役でも良いからやりたかったんだ。


 家で貰った台本をチェックする。題名は【パパと娘の奮闘記~社畜に家事はむずかしい~】共演する役者さんたちは初めての人たちしか居ないな。あ、監督は以前会ったことがある人だね。


 さて、ボクの役は・・・【相澤あいざわ 雛子ひなこ】主人公の娘役みたいだ。ざっと台本に目を通してみた。ふむふむ。奥さんに愛想を尽かされ出ていかれた社畜の夫が更に仕事もクビになり、残された娘と共に料理や掃除、買い物など奥さんがやってくれていた事に苦戦しながら頑張る話のようだ。


 へぇ~。あ、これ第一話って書いてある。連続ドラマなのかな?主人公の相澤つとむ役は実力派の役者、東郷とうごう 俊介しゅんすけさんらしいです。ググってみたら40代の渋いオジサマだった。


 お母さん役は序盤しか出番が無いけど、こっちも有名な女優さんみたいだ。小岩井こいわい 順子じゅんこさんか。こっちもググってみる。え?!この人もうすぐ50代なの?!見た目30代前半なんだけど?


 ま、まぁ良いや。とりあえず練習しておこう。



 収録当日、撮影スタジオにマネージャーの鈴木さんが送ってくれた。ボクの役は初登場時、家で妻に逃げられ仕事をクビになった後、父親に起こされる所から始まる。「雛子・・・ママ家出しちゃった・・・どうしよう」と言われ大泣きして、その後前向きに父娘で奮闘していく。


 なので撮影現場はハウススタジオと呼ばれる、そのまんま一軒家をレンタル出来る所だった。お金さえ出せば一般人でも借りられるらしい。あくまで撮影用だから寝泊まりは禁止されてるけどね。


「ユリちゃんだね。僕は東郷俊介。君のパパの役だよ。よろしくね。」

「はい!姫宮ユリです!よろしくおねがいします!」


 他にも同じシーンには映らないけどママ役の人やその他の役者さんにも挨拶していく。スタッフさんには事前に挨拶してある。鈴木さんのアドバイスで早めに現場入りしてたのだ。


 ボクが作ってきた役は[理想の娘]だ。それでリハーサルをしたら監督に「それだ!!!」て叫ばれた。びっくりした。


 その後、本番は1発OKを貰い直ぐにボクのお仕事は終わった。監督に帰り際、2話の台本を貰った。撮影中に閃いて修正したバージョンらしい。



 月曜の夜九時に放送された【パパと娘の奮闘記~社畜に家事はむずかしい~】は思いの外好評だった。SNSでエゴサしてみたら凄く盛り上がっている。気になる話題は「俺、社畜なのに可愛い娘が居ないんだが」とか「私なら娘絶対連れてく!」とか「ロリコンに目覚めた!」とかある。・・・最後のは無視しよう。


 翌日、興奮したSクラスの皆に囲まれる。でもSクラスだけで良かった。他のクラスにはまだ子役やってる事を知られてないみたいだ。

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