第11話 百合姫の才能

 お仕事をしつつ学生生活を楽しんでいる。正直勉強は学ぶことがほぼ無いから友だちを作って遊ぶために通っていると言っても過言ではない。


「ユリー!!野球しようぜ!」

「ユリさん、勉強を教えて欲しいのですが。」

「ユリちゃん、俺と話をしょう!」

「ユリヒメちゃん~わたくしとあそびましょ~」


 君たち、ボクの身体は1つしかないんだけど?


「ユリは野球の才能がある!おれと一緒にプロを目指すんだ!お前らは諦めろ!」

「何を馬鹿な事を・・・ユリさんは天才だ!僕と共に世界最高峰の学者になるんだ!邪魔をするな!!」

「え?ユリちゃんそんな約束したの?」


「約束してないよ。」投児とうじまなぶが勝手に言ってるだけ。


「だよな!しかしユリちゃんは何でも出来るよね。」

「今の所苦手な事は無いかも。」

「ふーん。じゃあこんな事は出来る?」


 公太朗は身体からモヤみたいなのを出して、それを右手に集めている。なにそれ?


『炎よ!』


 ボッと公太朗の手のひらに炎が現れた。


「すごいね!魔法みたいだよ!」

「ははっ!魔法だからね。」


 公太朗がやったようにモヤを身体から集めて右手に炎を出してみる。


ボッ!


「出来た!」

「嘘でしょ?!なんで見ただけで使えるんだよ!魔力操作すら知らないはずなのに!それに無詠唱って俺でも無理なのに・・・」

「?」


 なんか急に頭を抱えてブツブツ言い出したので、このモヤモヤで遊んでみよう。他の子達は言い合いをしていてそれどころじゃなさそうだし。


 モヤを身体に纏わせると身体のスペックが跳ね上がるし、眼に集めたら物や人の情報データが視覚化されて見える。便利だなこれ。あ、火がだせるなら・・・


 人指し指に炎、中指に水、薬指に石、小指に風、親指に光。左手も使おう。闇、雷、氷、植物、聖。思いつく限りの魔法属性を同時に出してみた。これはキレイだね!


「公太朗、公太朗!見てみて!キレイ!」

「・・・は?」


 公太朗は眼が落ちそうなくらい見開いて気絶した。なんでよ!



 投児が公太朗を保健室まで運んでくれた。先生は丁度居ないし、投児が一番体格が良いからね。


 もしかして魔法って人に見せないほうが良いのかな?自重しよう。でも気が付かれないようになら使ってもいいよね!他にも汎用性ありそうだし。


 三人でじゃんけんをして投児が買ったから、今日の昼休みは野球をする事になった。公太朗はまだ保健室から帰ってこない。


「よっしゃ!ユリ!魔球投げてくれマキュー!」


 投児は変化球の事を魔球と呼んでいる。OK魔球ね。・・・魔法を使えば本物の魔球になるのでは?やってみよう!


「魔球いっきまーす!とうっ!!」


 ボクの投げたボールは10個に分裂しそれぞれカーブを描きながら投児に襲いかかる。


「ちょっ!うそ・・・だろ?!!」


 投児はなんとかバットを降ったけれど、球にはカスリもしなかった。9個は幻影なので当たらないよ。全部微妙に時間差で来るからね。答は1/9。


「あんなの打てるわけないだろ!!でもマジすげぇ!!やっぱユリは野球の天才だぜ!!!」


 いや魔法だから。

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