第7話 CMのお仕事

 マネージャー鈴木さんからお仕事の連絡があった。今回もモデルのお仕事だけど写真じゃなくてCMの撮影らしい。有名な服屋さんで、ハニークローゼット、通称ハニクロ。


 指定のスタジオに行くとボクの着る予定の服が大量に衣装掛けにあった。

こ、これ全部着て撮影するの?今日中に終わるのかな・・・


「ユリちゃん!こっちこっち!」


 見覚えがないオジサンがボクを呼んでいる。誰?


「おぉ!本物も可愛いねぇ!あ、オジサンはハニクロの担当プロデューサーなんだよ。」


「よろしくおねがいします!」


「はい、よろしくね。ウチのCMは服を着て自然な感じで楽しそうにしてもらえれば良いから。シンプルさが売りなんだよ。」


「わかりました!」


 ハニクロオジサンの要望通りに撮影をしていく。


「うーん。なんかこう・・・あと一つ足りないなぁ。」


 ハニクロオジサンの一言で一時的に撮影が止まった。監督達とハニクロオジサンが緊急会議を行い、ボクは休憩になった。


 30分後、監督が申し訳無さそうな顔でやって来てこう言った。


「ユリちゃん・・・申し訳ないけど。何か芸を披露出来ないかね?ハニクロの担当さんがね、せっかくユリちゃんをモデルにするから特別な物にしたいとか言い出しやがってね・・・」


 監督、後半感情が漏れてますよ。ハニクロオジサンは監督の後ろの方でこちらを見てニコニコしている。現場を掻き回すタイプの厄介さんだね。まぁ仕事なのでやりますけどね。


 まだ幼稚園児なので曲芸みたいな事は止めておこう。だとしたら・・・歌とか?


 ボクは有名な洋楽を歌ってみた。英和辞典と英語の教科書。それと映画の字幕版でだいたい英語は覚えた。洋楽を歌うくらいなら出来る。英会話するには少し不安かな。


「ブラボー!ブラボー!!監督ぅ!今の撮れたかい?最高だったよねぇ!」


「もちろんです。映像チェックしましょう!」


 え?今ので良かったの?まずは声出しのために軽く歌っただけなんだけど・・・良かったらしい。


 結局あの大量の衣装は要らなかったようで、着た衣装は1着だけだった。あの歌でCMの尺いっぱい使うそうだ。服のCMなのにね。



 ボクの出たハニクロのCMが流れ始めたら、直ぐに大反響があったと連絡が来た。[天使の歌声]とか騒がれているらしい。そのおかげで歌のオファーも沢山来始めた。またしても子役なのに役者じゃない所に注目されちゃったね。


 ついでにCMでモデルの名前が出ていたので、ついにボクの名前が全国的に知られるようになった。芸名だけどね。ボクの芸名は【姫宮ユリ】だ。

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