第4話 スカウト?

 お遊戯会の後、いつの間にかお母さんに芸能事務所からの名刺が渡されていた。

どうやら保護者の中に業界関係者が居たらしく、あのあとわざわざ名刺を渡しに来たらしい。


「ユリちゃん、芸能人・・・テレビに出る人になれるかもしれないけど。なりたい?」


「んー・・・。」


 せっかく色んな才能に目覚めているから色々な事をやってみたいな。子供の内だけとかならやってみても良いかな。


「やってみる!」


「そう、わかったわ!」


 お母さんは直ぐに名刺を見ながら電話を掛けて、了承の返事をすると何かの日取りの相談を始めた。事務所に行く日を決めているっぽいね。



 翌日、幼稚園をお休みして芸能事務所に行くことになった。早くない?


大手芸能事務所[トップチャイルド]通称[トッチャ]。

 子役から大御所まで幅広い役者やタレント、アイドルや声優まで所属する巨大な会社だ。ライバル企業は某男性アイドルグループだらけの所と、女性アイドルグループだらけの所。

でも基本的に[役者]がメインなのでそこまで食い合ってないから蹴落とし合いは少ないらしい。まぁこれは前回での世間的な認識なので、実際その業界に入ってみたら違う可能性もあるかもね。


 小学生未満の子役は特に演技指導とかは無いらしい。泣かずに人見知りせずにいて可愛ければOKなんだそうだ。小学生からは多少演技が出来ないと仕事が貰えない。中学生だともっと厳しくなるんだとか。うへぇ。子供なのに大変だね~。


「では百合姫ちゃんは”子役”としてウチに所属してもらいます・・・」


 お母さんにそんな説明をする事務所の人、鈴木さん。一応マネージャーになる人なんだけど、子役をまとめて面倒見ているらしく、仕事を見つけてスケジュールを組むけど現場にはあまり一緒には行けないらしい。

抱えている担当子役が多いからね。

なので基本的に保護者が現場に連れていく事になる。お母さん仕事あるから無理じゃない?え?仕事減らすの?大丈夫?


 どうやらお父さんと離婚した時に慰謝料をガッポリ取ってたらしく貯金が結構あるからボクが高校卒業までくらいなら働かなくても大丈夫らしい。どれだけ取ったんだろう・・・。

ちなみに離婚理由はお父さんの浮気だそうだ。しかもボクを妊娠している最中に浮気相手の家から帰らないから、お母さんはその家に怒鳴り込んで行って「離婚するか父親になるか選びなさい!!」って叱りつけたらしい。

知らなかった!前回は聞いちゃダメなのかと思って聞けなかったんだよ。っていうか、と言う事は離婚を選んだんだね。最低だよ!

ついでに浮気相手が複数いて、異母兄弟が何人もいるらしいってカミングアウトまでされた。お父・・・いやクソ親父!


 ついでだからと更にカミングアウトされた。お母さんの実家はお金持ちらしい。両親が「あんな男とは結婚するな!」と言われたけど無理やり駆け落ち同然に結婚したから離婚後も気まずくてそれ以来実家に連絡すらしてないとか。

孫も見せたいからこの際、連絡してみるそうだ。大丈夫かな?修羅場にならない?



 まぁとりあえず、所属したのでお仕事の連絡があるまで普段どおりで良いみたいだ。


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