第3話 お遊戯会

 幼稚園で劇をやることになった。以前から年間行事として決まっていたみたいだけど、小さい子供に結構前から伝えても直ぐに忘れるだろうと、配役を決める日まで聞かされなかった。ちなみに演目は他の組と被らないように先生達で事前に決められていた。ウチのうさぎ組はシンデレラだ。


 うさぎ組のみんなは主役をやりたい子が沢山いた。シンデレラ役になりたい女の子10人、王子様になりたい男の子4人。優しい魔法使いになりたい男女3人。何故か多い、馬車馬になりたい男の子9人。やる気のない男の子2人。


 空いてる役は継母、意地悪な義姉三人。王子様の従者。流石に継母と義姉はいないとストーリー的に成り立たないから女子の中からくじ引きで悪役を決めることになった。


 どうやら今世のボクは運も良いようで悪役を回避出来た。特にやりたい役は無いけれど、みんなが嫌がる物をやりたいとは思えない。

そして結果、悪役が決まってギャン泣きする女の子達。何故か釣られて泣く他の子供たち。慌てる先生。これは落ち着くまで待つしかないね。

物語の主人公とかならここで動いて皆を纏め上げたりするんだろうけど、未だに友達も居ないボクにはちょっと無理かな。こうゆうのは友達が多いリーダシップを持った子がやることだよ。



 結局、仕切りたがり屋の女の子が仕方なく友達と共に悪役を引き受けてくれてなんとかなった。彼女はツンデレの気質があると思う。

「しかたないわね!」とか「あたしがやってあげるわよ!」とか「〇〇ちゃんのためじゃないんだからね!」とか言ってた。


 いや、なんとかなってないや。シンデレラ5人いるんですけど?良いの?

と思ったら、シンデレラの出番を5等分して場面ごとに演者が変わることになった。同時に5人出るのかと思って焦ったよ。


 ちなみにボクの役は舞踏会で踊っているモブ令嬢A。ドレスとかはお母さんに作って貰ってね!という幼稚園からの無茶振りだった。器用になったボクはそのドレスを自作することにした。裁縫にも憧れてたんだ!前世では絶対ムリだったからね。


 お母さんに布とフリルを買ってもらって、服の作り方をネットで調べて作っていく。料理のときみたいに、ドレス作りでもカンに従っていくと面白いくらいサクサク作れた。縫い物なんてミシンかっ!ってくらいに早い。ボクの身体どんなスペックしてるんだろう。




 やってしまった・・・!主役のシンデレラより綺麗で豪華なドレスを作ってしまった。衣装ありの練習でそれが発覚して、シンデレラ役の子達に「ずるい!」と駄々を捏ねられてボクの作ったドレスは本番でシンデレラ役の子達が着回す事になった。幼稚園児だから体格差そんなに無いからね。みんな普通に着られた。


 ボクは改めて控えめのドレスを作り直して本番に挑んだ。お母さんも見に来てくれた。そしてまたしても新たな才能に目覚めてしまった。

明らかにボクの演技が高すぎて浮いてしまったのだ。劇中のダンスも一際眼を引いてしまいシンデレラの存在感が消えてしまった。

子供たちは劇をすることに夢中で気が付かなかったけど、見に来た保護者や他のクラスの先生方もポカーンとして、劇が終わった後に

「天才がいた!」とか「今のうちにサインが欲しい!」などなど騒がしかった。

お母さんは「どこの芸能事務所にはいってますか?」とか「教育法を教えて欲しい!」とか質問攻めにあっていた。

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