第2話 お母さん
夕方に近くなり、次々とお迎えが来て帰っていくクラスメイト達。ボクのお迎えはいつかな?
そう思っていたらボクのお迎えの番が来た。お母さんだ。大分若くなっているがお母さんだ。やはりボクは逆行しているようだ。
「ユリちゃん、帰りますよ。」
「はーい!」
意識は大人だけど、本能的な部分は園児なのか、お母さんに対して普通の子供みたいに応じられた。なるほど、これが無邪気さか。しばらく子供として過ごすのだからこの気持を忘れずに生きていこう。
「ユリちゃん、幼稚園楽しかった?」
「うん!今日はねー積み木で遊んだの!」
「そう、良かったわね。お友達は出来た?」
「んー・・・まだ!」
「早くお友達が出来るといいわね!」
「うん!」
お母さんと車に乗って家に帰る。しばらく林に囲まれた道路を走って、山なのか丘なのか分からないけど、坂を下ったら普通の住宅街に出た。この幼稚園って随分辺鄙(へんぴ)な所にあったんだな。前世では小さい頃の記憶あんまり無かったから知らなかったよ。
家はアパートだけど一世帯が2階もあるタイプだ。それが6世帯、横に繋がっている。ここも前世?と一緒だった。ボク自身は色々反転してるけど、それ以外は前回と一緒みたいだね。
夕飯はドライブスルーで買ったハンバーガーセット。そういえばお母さんはあんまり料理をしない人だった。お米は炊くけど、おかずはレトルトカレーやお茶漬けなどの白米があれば完成する物ばっかりだった気がする。中学に上がったあたりからはカップラーメンやトーストが増えたっけ。前回のボクが太ってたのはこれも原因だと思う。
自炊をしようにも稀に見る不器用さだったから無理だった。しかし今世はめちゃくちゃ手先が器用になっている。これは料理を覚えるしかないよね!料理を作る事自体には憧れがあったんだ。テレビでやっている○分クッキングとか見るの好きだったからね。
「お母さん。ボク料理してみたい!」
「えぇ?!ユリちゃんにはまだ早いわよ?」
「やりたいやりたい!!」
「もー、しょうがないわねー。卵かけご飯とかなら大丈夫かしら・・・?」
「違うの!もっと包丁で切ったり、フライパンで焼いたりするの!!」
「うーん。じゃあ野菜炒めかしら・・・」
「それ!それやる!!」
ボクはどうにか料理をする許可を得られた。野菜を切って炒めるだけ。前世ではそれだけの作業が難題だったんだよね。しかしこの身体なら面白いくらいに理想的に野菜を切ることが出来た。
「え?!凄い!!ユリちゃん天才!!」
「ふふん!」
ドヤ顔で胸を張るボク。調子に乗ってそのまま炒める作業に入る。確か熱したフライパンに油をしいて、硬い物から炒めるんだったかな?人参からかな。
ふむ。なんとなくだけど、どうすればまんべんなく火が通るか分かる。前世では何の才能も無かったボクだけど反転したボクは料理の才能があるのかもしれない!そのまま次々と材料を投入して、塩コショウと醤油をカンに頼って入れていく。
「できた!」
「わー!ユリちゃん偉い!天才!!」
ボクの作った野菜炒めはめっちゃ美味しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます