第25話 何でこのタイミング!?

 私は深く絶望していた。

 来年の春から学園都市に行って寮生活をするからとか、そんな些細な理由じゃない。

 母が妊娠したのだ!!!

 一見めでたい事のように感じるだろう。

 そう、私も最初はそう思った。

 だがしかし!

 弟かな〜、妹かな〜、とルンルンしていた私にユズの野郎は言いやがったのだ!


「入学後にお生まれになるのですね。残念でしたね、アリー様」


 ほんとあのクソ野郎!!ざけんじゃねぇ!

 失礼、怒りのあまり口調が乱れました。

 でも実際、出産予定日は私の入学後すぐで、私は早くても赤ちゃんが産まれてから3ヶ月後……夏期休みの時に会えるのが最初になる。

 あぁ、本当に悔しい。

 産まれてから最初の3ヶ月間を見逃すなんて!

 そしてこれから先もしばらくは、夏期休みと冬期休みの半年ごとにしか会えないなんてぇ!


「なんでお母様ったらもう少し早く妊娠してくれなかったのかしら……」


「子は授かりものと言いますからねぇ」


 膨れっ面で無茶を言う私の横で、おじいちゃんみたいな事を言うユズ。

 その手に持ってるティーカップも段々湯のみに見えてきた。


「入学遅らせたりできないのかしら? 」


「アリー様1人のために無茶は出来ませんよ」


「それくらい分かってるわよ……」


 ふぅ、とため息をつく私。その横でユズも息を吐くが、コイツのは紅茶に癒されてホッコリして出た息だ。

 なんかムカつく。


「ねぇ、ユズ」


「はい、何でしょうアリー様」


「ユズの鼻の穴に角砂糖詰めてもいい? 」


「逆にお聞きしますが、アリー様はそう聞かれたらどうしますか?」


「正気を疑うわ」


「今の私の心境と同じですね」


 戦いのゴングが鳴った。

 そしてユズと掴み合いの喧嘩になろうかという時、両親の姿が。

 私はユズを放ったらかして、母の元へ駆け寄る。


「お母様、赤ちゃんもう動きますか? 」


「んー、それはまだねぇ」


 そう言ってクスクス笑う母。

 早く赤ちゃんが動くのを確認したいものだ。


「元気に育つのよ〜」


 母のお腹を優しく撫でて、祈るように言葉を紡いだ。

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