第20話 選定の儀
月日が経つのは早いもので、前世を思い出してから3年が経った。
そして、今日は私の選定の儀の日。
3年前。
レティは私のデザインしたドレスを着て選定の儀に向かい、火の魔力と学園入学規定以上の魔力量を計測したことによって、翌年学園に入学した。
そして、その魔力量の多さからこの国【エヴァンスノア王国】の第2王子の婚約者候補にも名を挙げることになった。
ちなみに私は、レティが婚約者候補に挙がったその時初めて、自分の今住んでいる国の名前を知ったのだ。
あの時の、無表情なくせに思いっきり私のことを馬鹿にしていると分かるユズの姿は、今思い出しても腹が立つ。
まぁ、それまで自国の名前すら知らなかった私も悪いには悪いのだけれど。
そしてレティと歳を同じくするユズも、当然選定の儀には行ったはずなのに、頑なに結果は教えてもらえなかった。
そもそもユズが私の傍を離れるのは、御手洗の時、入浴の時、就寝の時くらいなので、いつ行ったかも本当に分からない。
しつこくユズに結果を訪ね続ける私に母は『魔力の性質を答えたくない人に無理に聞くのはマナー違反なのよ?』やんわりと、でも有無を言わさぬ口調で窘めたので、それからは聞いていない。
レティが選定の儀を受けた翌年、シェリーも選定の儀を受け、水の魔力と学園入学資格を得た。
先月選定の儀を受けたココも、学園入学資格と風の魔力を得た。
勝手なイメージ、おそらく前世から引き継いできたものだとは思うのだが、銀色の髪を持つシェリーが水の魔力、水色の髪を持つココが風の魔力と聞くと、逆じゃね?と思ってしまう私を許して欲しい。
ちなみに、赤い髪を持つレティが火の魔力の持ち主ということには、拍手を送りたいくらい納得している。
そして、今日は私の番。
レアだと思われる光の魔力だったりして〜!とキャーキャー言いたいくらいには興奮していた。
内心、異世界転生を果たしたので、チート的なものもあるのでは!?と期待もしていた。
だが。
選定の儀を行う教会で、厳かに名前を呼ばれ、魔力の性質と量を測定するという水晶玉に手をかざした私は、ガッカリしてしまった。
私が手をかざした水晶玉は、そう、一言で言うならば…泥団子。
これに尽きる。
水晶玉の中央から、茶色いモヤのような物がフワフワと浮かんだと思ったら、あっという間に泥団子になった。
私は、もっとこう……眩いまでの光に輝く水晶玉!みたいなのを想像してたのに、まさかの泥団子。
今までありがとうございました。
チートとか所詮ラノベの世界でした。
何故か目の前で目を丸くして驚く司祭様に一礼して、私は教会の扉を開け、家族の元に行くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます