第21話 意外な事実


 扉を開けると、そこには待っていた両親。

 と、おまけのユズ。


「どうだった?私の可愛い可愛いアリー」


「お父様……それが、その、泥団子でしたの」


 透明度の高い水晶玉を、泥団子のようにしてしまった罪悪感で声が小さくなる。

 手を離すと元に戻ると知っていても、あの泥団子状態は申し訳なさ過ぎた。


「泥団子? 」


 両親が頭の上にはてなマークを浮かべているのが分かる。


「アリー様は土の魔力の持ち主だったのですね、泥臭いアリー様にピッタリの魔力だと思われます」


「ねぇ、喧嘩売ってる?喧嘩売ってるわね?そもそもその理論は土の魔力持ちの方に失礼じゃない! 」


「ハッ、そうでございました。申し訳ございません、アリー様以外の土の魔力保持者の皆様」


「ねぇ、そこで私をわざわざ外す意味ある?しかも、ハッ、とか言うならもっと頑張りなさいよ、表情筋! 」



 本当見事なまでに、ユズの表情筋は動かない。

 ボイコットするにも程がある。

 ユズと2人でやいのやいの言っていると、難しい顔をしていた両親に話しかけられる。


「ねぇ、アリー。その泥団子?は水晶玉一杯茶色に染まったということでいいのかな? 」


「はい、お父様。水晶玉の中央からモヤモヤした茶色いのが出てきたと思ったら、あっという間に透明だった水晶玉がまっ茶色になってしまいましたの!ガッカリにも程が……「アリー!あぁ、なんて素晴らしいことなの!!! 」


 教会内で起こったことを話し、私がいかにガッカリしたか熱弁しようとしていたら、母に気色満面の笑みで遮られた。


 え?

 泥団子素晴らしいの?



 よくよく話を聞くと、水晶玉を染めるモヤモヤの色は魔力の性質を、その濃さと水晶玉を何処まで染めるかの範囲は魔力量を指し示しているらしく。

 ええっとー、それはその、つまり?


「アリーは、魔力量がかなり多い土の魔力保持者と言うことになるね」


 内心の疑問に答えるかのように、父が笑顔で言い切った。


 泥団子はチートでした。

 うそやん。

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