第19話 再びのヤンデレ


「こ、心に欠陥とは具体的に? 」


 恐る恐る聞いてみる。

 お父さんの靴下、臭いのは分かっているのに、たまに無性に嗅ぎたくなるチャレンジ精神みたいなものに似てるね。

 いや、ちょっと違うか。


 シェリーは少し上を向いて考えたあと。


「1つの物や人に執着して、それを害すものを片っ端から攻撃して、国を混乱させたり………? 」


 空気が凍った。


 こっっっっわ!

 国混乱させる程攻撃しまくるの怖くない?

 もうあれだよ、ヤンデレアゲインだよ!

 この国ヤンデレ多すぎじゃない?


「でも、ここ数百年は闇属性の魔力の人はいないから、大丈夫………」


 続いたシェリーの言葉に、盛大なフラグが立った気がしないでもないけど、無視よ私!



 皆の話をまとめるとこうだ。

 人は生まれながらに魔力を持っている。

 その魔力の性質を決めるのが、平民から貴族まで貴賎を問わず、7歳の子どもを集めて行われる【選定の儀】

 性質は火・水・土・風・闇・光の6種類。


 でも前世でよく見たラノベとかとは違って、魔法で事象を具現化するほどの強い魔力を持ってる人は、今の時代は少ないらしい。

 あくまで少ないだけであって、いるにはいるみたいだけどね。


 そしてこれまたテンプレではあるのだけれど、貴族、特に高位貴族が高い魔力量を保持していることが多く。

 また、平民でも選定の儀で一定以上の魔力量が測定された場合、国の管理する学校、【王立魔法学園】へ通うことになるらしい。


 何故魔力量が少なく、魔法を使えない平民まで全ての国民が選定の儀を行うかというと。

 性質が定まっていない魔力というのは酷く不安定で、成長するにつれ魔力暴走を起こす可能性が高いからだそう。

 つまり、7歳の時点で性質を定めて魔力の安定化を図るのが目的という訳だ。


 そして、選定の儀というのは特別な意味を持つらしく。

 精一杯のオシャレをして臨むのだそう。

 前世の記憶でいう【七五三】に近いものなのかな?とも思ったりする。


 レティの誕生日は2ヶ月後。

 月初めに、その月の誕生日の子たちの選定の儀を纏めて行うそうなので、ドレスが仕上がる時期としてもちょうどいいのではないだろうか。


 あぁ、ちなみにこの世界での1年は12ヶ月=360日。

 31日の日はない。

 二四六九士(ニシムクサムライ)と覚えなくてもいい訳だ。

 余談だが、私は士がどの月を指すのかが分からなくて困惑したことがある。

 話を戻そう。

 時間に関しては前世ほど厳密ではなく、教会の鐘が1日16回鳴るので、それに合わせて行動する。

 これには正直まだ慣れない。


 日本と共通点を見出した私は、ひょっとしたらここは単なる異世界ではなく、乙女ゲーム転生だったりするのではないか?なんて考えてみる。

 ま、そこまでテンプレとはいかないか。


 ふと浮かんだ考えを打ち消してしまい、その内忘れてしまった。

 そして、そのことを10年後の私が後悔することを、今はまだ知らない。

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