第40話「試験監督のお仕事」
ぐちゃ、ぐちゃ…………。
床にぶちまけられた肉を、異様な瘴気に包まれたグールが食らっている。
腕、足、内臓──。そのすべてを余すとこなく。
「ひっ……ヒッ……ひぃぃ」
「ちょ、静かにしてよ──……。肉の予備はもうないんだから」
そういって、ズダ袋の中に残っていた、腐りかけのゴブリンの肉をポイポイと、さらにばら撒いて眼下のグールの気を引きつけた。
「あーくそ。ひっどい臭い……。帰ったら、おねー様とお風呂入んなきゃ」
「な、なによあんた? 誰よ、アンタぁ?!」
天井に
その小脇にはミカを抱えていた。
「ふふ~ん。ただの通りすがりの親切な冒険者よ。……ってゆーかー、アンタは何だってこんなバカな真似してんのよ?」
「し、知らない! 知らないわよ!──ッ、アンタ中級のくせに偉そうよ!」
ティエラに救われた身でありながら、ミカがギャーギャーと騒がしい。
「だから騒ぐなって言ってんでしょ?!……ったく、ギルドのランクなんてどーでもいいわよ。こっちは身銭稼ぐために冒険者やってるだけ。ランクとかはアンタら人間──
自らの首に掛かっている冒険者認識票に刻まれたランクを見て、本当につまらなそうな顔をするティエラ。
──はぁ……。バカバカしい。
小さくため息をついて、天井に設けられている空気穴によじ登る。
「それにしても、アイツも無茶するわねー。下級のグールがいないから、中級以上のグールを狩ろうとか──……馬鹿の考え方よ、それってば」
「うぅ……! は、離しなさい! 離しなさいよッ! 誰も助けてなんて頼んでない!!」
──いや、頼んでたやん……。
ま、いっか。
ジタバタと暴れるミカを鬱陶しそうにしながらも、ティエラは慣れた様子で狭い空気穴をよじ登っていく。
靴や腕に仕込まれている
「はなせぇぇぇえええええ!」
ち……。
「あ゛? 落としていいの?」
グルァァァアアアアア!!
「ひぃ!! い、いや!! は、離さないで……!」
蹴り落とそうとするティエラの気配を感じて、ミカは必至で縋り付く。
ったく……。
「ふん。こっちも助けたくて助けてるんじゃないわよ。……こーみえて、試験官をやらされてんのー」
「し、試験官? あ、アンタがぁ?」
「そーよ……」
はぁ~……と、つまらなさそうにため息をつき、
「不正の監視と受験者の被害の極限……。本当ならここに入るのすら止めるべきだったんだけどね」
中級昇任試験のために、中級以上の魔物を狩るとかバカにもほどがある。
しかし、あの
まさか、馬鹿な上級冒険者に使うはめになるとは思っていなかったけど。
「……ま、これで晴れてアイツも中級になれたんじゃないかしらねー? ミッションコンプリートぉぉ」
うふふふふふ。
不気味に笑いながら、ティエラは地下墓所に設けられた狭い空気穴を、エッチらオッチラと昇って行った。
その姿を第11階層にいた
グォォォアァオァオアアアアアアアアアアアアアアア!!
唸り声をあげていたとか……。
──そして、ところ変わって地下墓所を抜け出したクラウス。
その顔は、ミカ(本人はそう思っている)の最後の血でドロドロだ。
「ゲホゲホ……あー、空気がうまい。たまんねー」
オッサン臭い口調でメリムが教会裏手の墓所の戸をあける。
ガコォン……!
そこは教会敷地であり、街中でもあった。
変わらぬ日常があり、人々が生活を謳歌している。
「ほらぁ、しゃんとしなよ」
ポイッとメリムに投げ捨てられると、クラウスはドサリと力なく地面にへたり込む。
しかし、そこに追い打ちをかけるように、
「ギルド昇級試験終了まであと、10分ですよー!」
ギルド前ではテリーヌが大声で未だ帰還しない受験者たちに注意を呼び掛けていた────。
※ 地下墓所での戦闘結果 ※
※ ※ ※
レベル:48(UP!)
名 前:クラウス・ノルドール
スキル:【
Lv1⇒自動帰還
Lv2⇒自動移動
Lv3⇒自動資源採取
Lv4⇒自動戦闘
Lv5⇒????
● クラウスの能力値
体 力: 338(UP!)
筋 力: 211(UP!)
防御力: 180(UP!)
魔 力: 114(UP!)
敏 捷: 215(UP!)
抵抗力: 77(UP!)
残ステータスポイント「+70」(UP!)
スロット1:剣技Lv4
スロット2:気配探知Lv3
スロット3:下級魔法Lv1
スロット4:自動帰還
スロット5:自動移動
スロット6:自動資源採取
スロット7:自動戦闘
● 称号「なし」
※ ※ ※
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