第21話「超高速狩場巡り」

 ──スキル『自動移動』!


 ブゥン……。


 ※ ※


 《移動先を指定してください》


 ●街

 ●フィールド・ダンジョン

 ●その他


 ※ ※


「よ~っし、今日はサクサク回るぞー。まずは……『毒の沼地』!」


 『自動戦闘』の検証も大詰めだ。

 そして、せっかく遠出するのだから『自動資源採取』と組み合わせて、効率的に狩りをすることに。


 クエストもいっぱい貰ってきた!


 ……ついでにわかったことなのだが、『自動移動』を使うときに馬や馬車などを使っていると、それを使って移動してくれるらしい。

 なにも歩きに限ったことではないと、ついさっき気付いたのだ。


 それというのも────。


「へっへー、今日はドロップ品が大量に出そうだからな~」


 クラウスがパンパンと気安く叩くのは、ギルドで借りた荷馬車と驢馬ロバだ。

 買っても借りても、そこそこのお値段がするので、普段のクラウスなら借りたことはないのだけど──今は違う。


 ……【自動機能オートモード】のおかげで、毎日毎日大量のドロップ品を得ることが可能なのだから、それらをすべて回収するならこれくらいはあって然るべき。


 で、物は試しとばかりに荷車の御者台に位置してから、

 スキルの『自動移動』でフィールド『毒の沼地』を指定すると、


 ※ ※


 《移動先:毒の沼地》

  ⇒移動にかかる時間「01:22:22」


 ※ ※


「うお! 乗合馬車より早いぞ!!──やっぱり馬車とかも自動で使ってくれるんだ」


 おそらくクラウスが習得している技術の中から、使える技術を最適化して自動化してくれるらしい。さらには持ち物などの概念もあるのだろう。さすがに自動で人のものを使ったりはしないようだ──優秀!!


 また、おそらく……乗ったことのない生物は無理だろう────飛竜とかね。


「今まで歩きだともう少し時間がかかってたから町から『自動移動』で狩場に直接行くことはほとんどなかったけど──」


 なるほど……。

 それだけ、ギルドの乗合馬車が気を使って近くまで送ってくれたということなのだろう。


(感謝感謝。爺さん、今までありがとう──)


 お空に爺さんの顔がキラリと光るぅ。


 「死んでねーよ!」と、空耳が聞こえたが気のせいだろう。


 それよりも、あまり使ってなかったけど、『自動移動』もたいがい、すっげースキルな気がしてきたぞ……?

 何気に、他の【自動機能オートモード】スキルと組み合わせれば化けそうな気がする。


 ……じゃ、さっそく──。


「──発動ッ」


 いつものように、フッと意識が飛ぶと、目が覚めた時には──。



「はい。到着~」



 例によって例のごとく、『毒の沼地』だ。


 今日はそれ以外にも、競合する冒険者のいない場所をサクサク回るつもりだ。

『毒の沼地』に『嘆きの渓谷』、そしていつもの『夕闇鉱山』!


 もちろん、ボスも倒して正常化も狙うッッ!

 ボスの魔石と経験値は美味しいからね。


 もう『自動戦闘』の検証はほぼ済んだからな────自重などせんよ?


 と、いうわけで────……。


「いくぜ、俺!」


 サッと、なんとな~く格好をつけて依頼書をバンバンバン!! と荷馬車に張り付けていく。

 それは数種類のもので、重複しているものも多数。


「くくく……。今宵こよいのクラウスさんはちょ~~っとばかり違うぜ」


 ~毒の沼地の『クエスト』~


 『毒消し草の採取』(ノルマ10本)×10枚

 『石化草の採取』(ノルマ5本)×3枚

 『マヒ消し草の採取』(ノルマ5本)×3枚


 『燃える水の採取』(ノルマかめ5杯)×3枚

 『あぶく水の採取』(ノルマかめ5杯)×3枚


 『毒蛙ポイズンフロッガーの討伐』(ノルマ5体)

 『スワンプスライムの討伐』(ノルマ5体)


「ふっふっふ……。これだけ採ってもまだまだ余裕があるぜ。すげーぞ……………………荷車・・の威力は!!」



 では、クールタイム終了を見計らって──。



 それではさっそく、

『自動資源採取』


 ※ ※


 《採取資源を指定してください》


 ●草木類←ピコン

 ●鉱石類

 ●生物類

 ●液体類←ピコン

 ●その他


 ※ ※



 ※ ※


《採取資源を指定してください》


 ●草木類

  ⇒キリモリ草、毒消し草、石化草、マヒ消し草、目薬の木、力の種、マッチョ草、フォートレスフルーツ、魔力草、敏捷ナッツ、アンチマジックの根、マンドラゴラ、ドラゴン草、浮力草、etc


   杉、松、楢、樫、黒檀、檜、胡桃、栂、梅、竹、雑草etc


   リンゴ、キウイ、梨、柿、ライム、レモン、ブドウ、大根、リーキ、キャベツ、レタス、アザミ、ニンジン、ブロッコリー、ニンニク、セロリ、芋、大豆、インゲン豆、ひよこ豆etc


 ●液体類

  ⇒水、塩水、海水、蒸留水、泥水、尿、畜尿etc

   硫酸、塩酸、酢酸、胃酸etc

   原油(燃える水)、メタン含有水(あぶく水)、スライム原液、血液、獣の血etc


 ※ ※



「おーし! 全部あるぜぃ、サックサク集めるぞー!」


 ブゥン……。


 ※ ※


 《採取資源:毒消し草×100、石化草×15、マヒ消し草×15》

 《採取資源:原油×5、メタン含有水×5》


  ⇒採取にかかる時間「00:42:38」


 ※ ※


「うわッ! 早いな!!」

 毒消し草は群生地を見つければそこまで困難ではないのはわかっていたが、石化草やマヒ消し草までこの程度で採取できるのか……。


 ギルド案内では、「見つけにくい草」として紹介されていたが、ユニークスキルの前にはそうでもないらしい。


「よし! かめを準備して────スキル『自動資源採取』……発動ッ!」


 ギルドで借りてきた背負子しょいこと甕を担うとスキルを発動。

 次に瞬間フッ……と意識が飛び、気が付いたときにはスタート地点から約100m程離れた沼の中の小島にいた。


「おっと! ここが最終採取ポイントか」


 どうやら、最後に取ったのは石化草らしい。

 一見して雑草にしか見えないものの、芋のような球根を持っていることから石化草であるとアタリをつけた。


「さて、ここまでは予想通り……。次は魔物!!」


 予想通り、沼地の中ほどに入ってしまい。

 気配探知には周囲に魔物の姿を捉えている。


「ポイズンフロッガー……。ザトウムシ。大鬼ヤンマか……」


 気配探知の精度が上がったおかげで下級モンスターなら、なんとなく識別ができるようになっていた。


「よし! まずはノルマから達成するぞ!」


 シュラン……と、濡れそぼつ黒曜石の短剣を構えると、今度は『自動戦闘』を開始する。


 クールタイム終了までにモンスターが迫ってきても、この程度の雑魚なら時間は稼げる。

 それよりも、今回の検証は、足場の悪いところでの検証と、状態異常にかかるかどうかの検証だ。


 そのため、荷物をいったん放置。


 魔物は現地で取れる資源などに興味を示さないから、放置しても安全だろう。

 むしろ、連れてきた驢馬ロバの方が危険だ。



「さぁ、狩るぞッ!」



 気配探知の索敵を頼りに、『自動戦闘』と組み合わせる。

 そうすれば少なくとも気配探知に捉えた魔物は全て倒せるだろう。


 《戦闘対象:ポイズンフロッガー×13、ザトウムシ×2、大鬼ヤンマ×10、スワンプスライム×6、蠢く泥炭×1》

  ⇒戦闘にかかる時間「00:20:10」


「よし────いけ、俺ッ!!」


 『自動戦闘』発動ッッ。



 フッと、いつもと同様に意識が飛び────…………そして、、気付いたときには、


「ゲホゲホっ!!」


 ……おぇぇぇえ!


 短距離を一気に駆け抜けたような息苦しさと、気怠さを感じるクラウス。


「く……! さすがに、キツイか!」 


 息苦しさは、毒の沼地の瘴気に喉がやられてせいか、

 それとも、激しい動きで息が切れたか──……。


「どっちにせよ、まだいける!」


 少し呼吸を落ち着けると、体の状態を再確認。

 いつも通り傷もなく、毒にも犯されていない。


 そして、目の間にはビチビチと跳ねるポイズンフロッガーの巨体がある。

 すでに首は斬り落とされていたので脊髄反射というやつだろう。


 クエスト素材をゲットしたはいいけど、


「ゲホゲホ……! なんて臭いだ……」


 あたりには、酷い匂いが立ち込めている。

 周囲は魔物の死体で溢れかえっており、それが沼の瘴気と混じって物凄い悪臭だ。


 だけど、自動戦闘は完ぺきに仕事をこなしてくれたようだ。


 よし!!

 魔物のドロップ品を集めたら────……。


「こんどは、安全に素材を回収するために────ボス戦だ!!」


 魔物由来のドロップ品は狩場の魔物を倒した時点で徐々に消えていくが、その前に冒険者が引き抜き・・・・所有権を獲得した自然素材は、そのまま現場に残るのだ。

 


「悪いけど、俺の安全確保のために死んでくれッ」


 クールタイムの終了を見守り、



 ステータスオープン!!

 『自動戦闘』


 ブゥン……。


 ※ ※


 《戦闘対象:スワンプグール》

  ⇒戦闘にかかる時間「00:05:27」


 ※ ※


「毒の沼地のボス……確か、昔一度だけパーティで戦ったな。ドロドロのグールだったっけ?」


 まだまだ駆け出しのころ(今も下級だけど……)、同じ下級者同士でパーティを組んであちこちの狩場に顔を出した。

 当時はどこが効率が良くて美味しい狩場だとか、そういうことは考えずに、ただただ冒険者として狩りをすることに精を出していた。


(若かったなー……)


 あの時のメンバーは今はどうしているやら。

 まだ、同じギルドで管を巻いているものや、とっくに他国に出ていったものなど様々だ。


「ま、おかげで楽ができる──」


 一人でなら絶対に『毒の沼地』の奥へは行っていないはずだから。 


「意識がないのは怖いけど、グールの悪臭を嗅がなくて済むのはありがたいね」


 さぁ、『毒の沼地』を終わらせよう!




 自動戦闘……────発動ッ!




 フッと、いつもと同様に。

 ────…………そして、気付いたときには、


「ブハッ!」


 大きく息を吐きだしたクラウス。

 そして、息を吸い込んだ瞬間────。


「おぇぇえ!」


 ひ、ひでぇ匂いだ……!


 周囲を見れば、バラバラに砕け散ったスワンプグールの死体が散乱している。

 アンデッド系を物理攻撃で倒そうとしたのだ。相当に無茶な戦いをしたらしい。


 どうやら自動戦闘では、スワンプグールを戦闘不能になるまで細切れにする戦闘をしたようだ。


 戦闘時間の大半は、移動とその作業に使われたのかもしれない。


「げほげほ!……よじ、ごれでドクノヌマヂごうりゃぐがんりょうだ……!」


 あまりに臭気に口元を覆うクラウス。鼻で息を吸わない様に口呼吸。


 ボキッ……!

 

 なんとか、討伐証明の下顎を抜き取ると、魔石だけを回収してグール素材は諦めた。

 それなりに高値で売れるらしいが、この匂いはたまらない!!


 ……ふぅ!


 そうしているうちに毒の沼地の瘴気が収まっていき、ゲコゲコとさみし気にカエルが鳴くだけの沼地に正常化されていった。


「よし! 『毒の沼地』攻略完了!!」



 ~ドロップ品(討伐証明)~


 ポイズンフロッガーの舌×13

 ザトウムシの前腕×2

 大鬼ヤンマの尾×10

 沼スライムの核片×6


 蠢く泥炭の少塊×1


 スワンプグールの下顎×1



 ~ドロップ品(素材)~ 


 ポイズンフロッガーの毒腺×13

 ザトウムシの糸袋×2

 大鬼ヤンマの卵塊×3

 沼スライムの濁り液×6


 香り高い泥炭×1



 ~ドロップ品(装備品)~ 


 錆びた長剣×1



 ~ドロップ品(魔石)~


 魔石(小)×13⇒使用済み

 緑の魔石(小)×2

 黄の魔石(小)×4

 虹の魔石(極小)×1

 魔石(やや小)×3⇒使用済み

 魔石(中)×1⇒使用済み



 ~採取品(草木類&液体類)~


 毒消し草×100

 石化草×15

 マヒ消し草×15

 原油×5

 メタン含有水×5



 ※ ※ ※

 

 クラウス・ノルドールのレベルが上昇しましたレベルアップ


 ※ ※ ※


「お……! 1レベアップ! やったぜ」


 さすがに下級の狩場では、レベルが上がり辛くなり始めたのを肌で実感し始めたクラウス。

 それでも、ボスを倒し、拾った魔石を全部使うことで何とかレベルアップにこぎつけた。


 このままどんどん行こう!!


 今日はあと二か所回るぞー!



 ※ ※ ※

レベル:41(UP!)

名 前:クラウス・ノルドール


スキル:【自動機能オートモード】Lv4

Lv1⇒自動帰還

Lv2⇒自動移動

Lv3⇒自動資源採取

Lv4⇒自動戦闘

Lv5⇒????


● クラウスの能力値


体 力: 302(UP!)

筋 力: 190(UP!)

防御力: 162(UP!)

魔 力: 100(UP!)

敏 捷: 189(UP!)

抵抗力:  67(UP!)


残ステータスポイント「+49」(UP!)


スロット1:剣技Lv4

スロット2:気配探知Lv3

スロット3:下級魔法Lv1

スロット4:自動帰還

スロット5:自動移動

スロット6:自動資源採取

スロット7:自動戦闘


● 称号「なし」


 ※ ※

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