第20話「『自動戦闘』検証終了!」
「──ご、ゴブぅぅ…………」
ブシュウウ……!
鮮血が舞い、
フッと、いつもと同様に意識が飛ぶ────…………そして、気付いたときには、
「ふはぁっぁ……」
軽い疲労感と、戦闘の手応え──。
うん。この感覚にも慣れてきたぞ。
「お……ホブゴブリン倒したー」
軽い汗をかいているのを実感したクラウスの目の前には、絶命したホブゴブリンの遺体。
奴は白目をむいているが、まだ体は温かく、今しがたまで戦闘があったのだろう。
だが、戦闘自体は一撃だったらしく、とくに武器が振るわれた形跡もない。
ボス戦でこれだ……。
「おいおいマジか。何度か倒したことがあるとはいえ──……こいつまで圧勝かよ」
以前はそこそこ苦戦していたホブゴブリン。
それがこれだ……。
『自動戦闘』は、今のところ敵なし────。
そして、巨体がズゥゥン……と倒れたことでようやく戦闘が終わったことを実感したクラウスであった。
「……ったく、とんでもないスキルだぜ」
汗をぬぐって、空を仰ぐと同時に、
さぁぁあ……と、森の霧が晴れていき、フィールドが正常化されていく。
よし! これで連続正常化だ。(……だからと言って何があるわけでもないけど)
「──もっとも、この森に魔物はもういないけどな」
そういって、背後にどっさり積まれた討伐証明と、ドロップ品の山を置くクラウス。
そこには今倒したばかりのホブゴブリンを除く、この森全ての魔物のドロップ品があった。
「──いやー。下級の狩場とはいえ、短時間でこれか……」
検証といいつつ、やり過ぎたかもしれない。
しかし、そのおかげで色々なことが分かり、欠点も少しばかり見えてきた。
『自動戦闘』を使った場合、
まず分かったことは、ほぼ無傷で魔物を殲滅できるということ。
そして、クールタイムの存在だ。
スキルは【自動機能】だけにとどまらず、すべからくクールタイムが存在する。
ゆえに連発ができないのがネックである。
さらに、最適に動くため時間も最短で、そして、移動も最適距離を使うということ。
要するに、一度戦ったことのある相手ならば、究極かつ無駄なく効率よく狩りができるらしい。
……試しに「スケルトンジェネラル」を選択候補に入れてみると、
《戦闘対象:スケルトンジェネラル》
⇒戦闘にかかる時間「223:11:45」と表示。
これは『スケルトンジェネラル』を一体倒すのにかかる時間が約223時間ということ。
つまり、この近辺にはいないことを指している。
だが、間違って戦闘することを選択したらどうなるのだろうか……。
きっと、どこか知らない土地で(例えば墓所の奥深く)スケルトンジェネラルを、
それを想像して、ゾッとするクラウス。
「つ、使い方を誤ると恐ろしい目にあいそうだな……」
ブルリと身震いする。
実際、今回の戦闘中にもヒヤリとすることが何度もあったのも事実。
例えば、コボルト、ゴブリンを複数選択し、殲滅したまではよかった。
しかし、偶然にも群れの中にゴブリンチーフが紛れていたことがあり、危うく奇襲を受けるところであった。
その時は、
後、当然の話ではあるが
おかげで、この森で初めて見かけたレアモンスター『レッサ―トレント』という木の魔物に後れを取るところであった。
まぁ、なんとか倒せたけど……。
フィールドボス(霧の森でいえば「ホブゴブリン」)より強い魔物にエンカウントする可能性も考慮しておかないと、調子に乗って自動戦闘で狩りをしていると死にかける──。
「結論…………。目視距離の敵と戦うべし。だな」
自動戦闘は無類の強さを誇るのは間違いないが、不足事態に対処するのが困難である。
これは『自動戦闘』に限らず『自動資源採取』などのユニークスキル【
「──あとは、ほんとうに強い相手と戦闘になった場合はどうなのかな?」
例えばドラゴン……。
今まで一度も戦闘したことはないけど、仮に戦闘が可能だとして、……本当に『自動戦闘』で戦えるのだろうか?
いくらユニークスキルでも超上位種を相手にすれば、とても無傷とは思えない。
「……まぁ、これはいずれ検証していく必要があるな」
いずれにしても……。
「使いどころを間違えなければ『自動戦闘』……かなり使えるぞ?」
そういって、ホブゴブリンのドロップ品を追加すると、ついに『霧の森』は完全に正常化されてしまった。
………………さて、帰るか。
~ドロップ品(討伐証明)~
ゴブリンリーダーの耳×23
ゴブリンチーフの耳×5
ゴブリンの耳×224
コボルトソルジャーの牙×22
コボルトBisの牙×7
コボルトの牙×389
グリンスライムの核片×21
ホブゴブリン耳×1
レッサ―トレント×1
~ドロップ品(装備品)~
粗末な短剣×100(残りは放棄)
粗末な手斧×5
粗末な棍棒×10(残りは放棄)
粗末な短槍×10(残りは放棄)
粗末な丸盾×20(残りは放棄)
粗末な長兼×20(残りは放棄)
粗削りな棍棒×1
~ドロップ品(素材)~
レッサートレントの香木×1
~ドロップ品(魔石)~
魔石(小)×203⇒100個使用(残りは破裂?防止)
赤の魔石(小)×15
青の魔石(小)×10
緑の魔石(小)×6
黄の魔石(小)×4
虹の魔石(極小)1
魔石(やや小)×23⇒使用済み
魔石(中)×1⇒使用済み
以上ッッ!!
「う……。お、重ッ」
一体どれだけ狩ったのかわからなくなってきた。
少しでも荷物を減らすため、大量に入手した魔石を使用。
それでも、ドロップ品の数は膨大だった。
※ ※ ※
クラウス・ノルドールの
クラウス・ノルドールの
※ ※ ※
※ ※ ※
レベル:40(UP!)
名 前:クラウス・ノルドール
スキル:【
Lv1⇒自動帰還
Lv2⇒自動移動
Lv3⇒自動資源採取
Lv4⇒自動戦闘
Lv5⇒????
● クラウスの能力値
体 力: 296(UP!)
筋 力: 187(UP!)
防御力: 159(UP!)
魔 力: 98(UP!)
敏 捷: 186(UP!)
抵抗力: 66(UP!)
残ステータスポイント「+46」(UP!)
スロット1:剣技Lv4
スロット2:気配探知Lv3
スロット3:下級魔法Lv1
スロット4:自動帰還
スロット5:自動移動
スロット6:自動資源採取
スロット7:自動戦闘
● 称号「なし」
〇臨時称号「下級の虐殺者」
⇒一定時間、下級の魔物のエンカウント率が著しく下がる。
※ ※
「わーい、レベルアップだー…………って、なんちゅう荷物の量だ」
レベルが上がっても、重いものは重い。
だけど、こんな時こそ、
──スキル『自動帰還』!
ブゥン……。
「よっしゃー、リズ! 待っとれい! お兄ちゃんが帰るぞー!!」
※ ※
《帰還先:クラウスの家》
⇒帰還にかかる時間「00:28:22」
※ ※
「──発動ッ!」
フッと意識がなくなれば家の前。
だが、まだ日は高い!!
「え? あれ? お、おにいちゃ──??」
──そして、リズたん確認ッッ!!
「行ってきます!!」
「え?…………あ、あれ? は、はや────」
すまんリズ! お兄ちゃんは仕事中だ!
許せ、MYシスター!!
まだまだ日は高いッッ!
「風呂と飯を頼むッッ!」
「ちょ?! え、何なに?」
……柄杓を手にしたリズがポカンとした顔でクラウスを見送っていた。
そのまま、大荷物を担いでバヒュン! と、ギルドに向かうと、
カランカラ~ン♪
と、カウベルの音も軽やかに、ギルド受付にて、
「ちーっす」
「はいは────……は?」
どっさり!!
「──これ、クエスト完了届です。あと、追加の討伐証明と素材でっす」
「へ…………? え? あ?」
約数百体分の魔物素材がこんもりと。
「おなしゃーーーーーーす」
「な、」
いつもの受付に、
いつものように納品しただけなのに……。
カウンターを埋め尽くさんばかりの「下級素材」。
な、
ななななん、
「なんじゃこりゃーーーーーーーーーーー!!」
テリーヌさんの怒号とも悲鳴ともつかぬ叫びが上がったとかなんとか……。
──チーン♪
~ ギルド報酬 ~
『魔物の討伐』×5枚 銀貨100枚+追加報酬1352枚。
ドロップ品の買い取り金貨12枚、銀貨78枚、銅貨70枚。
(内訳は、クエスト成功報酬が銀貨100枚、
追加報酬が銀貨1352枚、
粗末な短剣×100で銅貨200枚、
粗末な手斧×5で銅貨10枚、
粗末な棍棒×10で銅貨10枚、
粗末な短槍×10で銅貨30枚、
粗末な丸盾×20で銅貨20枚、
粗末な長槍×20で銅貨100枚、
レッサ―トレントの香木が金貨5枚、
色付きの魔石が諸々で金貨7枚と銀貨48枚、)
…………以上なり。
「わーい。大金だー」
「おう、ごらッ! クラウスてめぇ────」
え?
「今、呼び捨て……」
「んっん~…………クラウスさん」
軽く咳払いするテリーヌは、全く笑っていない目つきでニコリとすると、
「…………これ、誰が今から鑑定すると? っていうか、この後のギルドの職員の大変さとか考えたことあります?」
「え? いや、だって──」
「チッ」
今、舌打ちした……?
なぜか、えらいジト目で睨まれてしまい、スゴスゴと退散するクラウス。
…………なんでやねん?
(俺、仕事しただけやんッッ!)
「……あ、まだ日が高いし、ついでにクエスト貰っていこ」
「そーいうとこやぞ」
さーせん。
テリーヌのジト目を躱しつつ、お知らせ板をチェックするクラウス。
さっそく『霧の森』の正常化が記載されていた。
(……さて、もう検証は十分だし、そろそろ俺も本気を出すかな)
たしか、下級の狩場の塩漬け依頼とかまだいっぱいあったな。
──『自動資源採取』も『自動戦闘』も慣れてきたし。
(なんか、ギルドマスターとかテリーヌにはすでに目をつけられている気がするし、いっそ……)
「──クエストもやれるだけやっちゃおうかな」
そうと決まれば、
「うっし…………!」
クラウスは拳と手のひらに打ち付け、気合十分!
お知らせ掲示板で人気のない狩場を確認すると、塩漬けや討伐クエストなど、ありとあらゆる下級狩場のクエストを、
「これと、これと、これと──」
『毒の沼地』のクエスト。
『嘆きの渓谷』のクエスト。
『夕闇鉱山』のクエスト。
近場の不人気狩場は全部やってやる!
くっくっく。
リズよ。
「今日の帰りは遅くなる────風呂と飯を準備して待っとれい!!」
愛しきMYシスターよ聞いてくれ。
「──リズぅぅぅうううう!! 俺は遠慮をやめるぞぉぉぉおおおおお!
そして、ついに!!
クラウスの
スパーーーン!!
「……遠慮はせい! あと、ギルドで叫ぶな! 気持ち悪い!!」
テリーヌのすさまじいツッコミを受けつつも、クエストを大量に受注するクラウスであった。
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