第12話「鉱石ザックザク!」

「あ、そーれ!」


 キンキンキンッ!


 調子よく岩壁を叩くクラウス。

 自動資源採取ではすでに両手いっぱいの魔光石(大)を採取していた。


 驚くなかれ────……。なんと1時間もしないうちに魔光石(大)を200個近く入手していたのだ。


「せっかくだし、魔光石(特大)も欲しいな。ただ、俺も今までに(特大)は一度も取ったことないんだよなー」


 昔通い詰めていたこともあり、魔光石は(小)~(大)まで、採掘項目の中にあった。

 それは日常生活で触れていた分も含まれているのだろう。


 しかし、さすがに(特大)は触れたことがなかったので、今こうして探しているわけだが……。


「まさか、いきなり鉱脈にぶち当たるなんてな────こりゃ、特大も期待できそうだ」

 

 『自動資源採取』にて、(大)の採取を選択すると、あっという間に鉱脈を自動で採掘したらしいクラウス。

 気が付いたときには周囲が功績で埋め尽くされており、今目の前にある鉱脈を掘り抜いていたのだ。


 しかも、疲労度もさほどではない。


 つまり無駄掘りすることなく、一瞬で鉱脈を探し出し掘り出したのだろう。

 目の前の巨大鉱脈はキラキラと輝いており、ザクザクと(小)(中)の鉱石やボタ石が落ちる。


 そして、ついに────!


「で、でたー!!」


 ガツンと叩きつけたつるはしの先から、ゴロンと転がり出た特大クラスの魔光石!


「でっけぇ! しかも、大量……! こんな近くに大鉱脈があったのかよ」


 転がり出た鉱石は(特大)×5に、(極大)×1


 なんで大きさがわかるのかって?

 そりゃアンタ────。


 ブゥン……。


 ※ ※


 《採取資源を指定してください》


 ●草木類

 ●鉱石類←ピコン

 ●生物類

 ●液体類

 ●その他


 ※ ※


 ※ ※


《採取資源を指定してください》


 ●鉱石類

  ⇒魔光石(小)(中)(大)(特大)(極大)、

   浮力石、魔鉄、霊光石、叫声石、猫啼石、

   石炭、水晶、琥珀、鉛、錫、ニッケル、鉄、鋼、銅、銀、金etc


  ⇒砂岩、泥岩、礫岩、凝灰岩、玄武岩、花崗岩、閃緑岩、角閃岩、緑色岩、岩塩etc


  ⇒魔石、人骨、獣骨、魔物の骨(下級)(中級)、ドラゴンボーンetc


 ※ ※


 ってな感じで、魔光石の(大)以降の実績が解除されたためだ。

 さっきまでは項目の中になかったので、今採掘したものが(特大)と(極大)で間違いない。


「……それにしても、日常生活でも色々触ってるんだな────ドラゴンボーンなんて、研修で上級冒険者の剣に触れた時くらいだぞ?」


 今思えばもっと触っておけばよかった……。

 ミスリルとか、オリハルコンとか……────。



「あ、帰ったら、試してみればいいのか!」



 何も買わなくても、試着とかさせてもらうだけでも、一度触れた物として実績が解除されるかもしれない。

 そうすれば、ミスリルやオリハルコンの採掘が可能になる……かもしれない。


「まぁ、そう簡単じゃないだろうけどな」


 少なくとも、下級冒険者がホイホイと採掘に行けるようなとこにミスリルやらオリハルコンがあるとは思えない。

 でも、将来を見越して実績を解除しておくのは悪い事ではないだろう。


「あとは、魔鉄とか霊光石なんて、どこで触れたんだろう? 覚えがないけど、実績としてあるのはありがたいな」


 ま、それはそれとして──……。

 ノルマも達成したことだし、


「さーて、検証してみますかね」


 ポキポキと指を鳴らして、クラウスはステータス画面を呼び出す。

 これから検証するのは『嘆きの渓谷』で試したことの応用だ。


 あの時のようにマンドラゴラが手に入るような幸運はそうそうないだろうけど────。


「試す価値はあるだろ?……というわけで、」


 ブゥン……。

 ステータス画面起動────『自動資源採取』確認!


「──ここでも、採取時間が極めて少ないものはこの鉱山にあるはず……さすがに「きん」はないだろうけど、」


 

 ※ ※


 《採取資源:浮力石》

  ⇒採取にかかる時間「229:14:26」


 ※ ※


「うん……まぁそうだよね──」

 希少鉱物がそうそう下級ダンジョンにあるわけがない。


 じゃ、

「次行ってみよー」


 ※ ※


 《採取資源:鉄》

  ⇒採取にかかる時間「00:00:10」


 ※ ※


「…………って、これ──捨てられてるナイフかい!!」

 あ、ダメだ。

 ちゃんと量とか指定しないと、身近に打ち捨てられているような装備品にまで反応してしまうらしい。


 さすがに自分が持っているものや他人の持ち物にまで反応しないようだが……。


 ※ ※


 《採取資源:銅》×100

  ⇒採取にかかる時間「12:23:22」


 ※ ※


 《採取資源:銀》×100

  ⇒採取にかかる時間「58:48:15」


 ※ ※


 《採取資源:金》×100

  ⇒採取にかかる時間「94:51:09」


 ※ ※


「ん~……どれもこれも芳しくないなー。時間から察するに、国有の鉱山あたりを指しているんだろうな」


 まー。

 物は試しって程度だしね。


 だいたい、ドワーフ連中がしっかりと調査しているんだから、そう簡単に未発見の鉱物なんてあるとは思えない。

 でも、やる価値は────ある。


 ※ ※


 《採取資源:魔鉄》

  ⇒採取にかかる時間「23:15:22」


 ※ ※


「ダメか―……。もっと細かく量を調整した方がいいのかな? 金鉱石とかそんなに集中して取れるものじゃないって聞くしなー」

 どうやら、本当にこの夕闇鉱山は「魔光石」しか取れないらしい。


 残る鉱石は霊鉱石くらいだけど、これは本来地下墓所なんかで取れる変異タイプの鉱石だったりで、普通の鉱山には──……。



 ブゥン……。


 ※ ※


 《採取資源:霊光石》

  ⇒採取にかかる時間「00:34:55」


 ※ ※




 ────え?




「…………う、うそ」


 あ、あったよ……。

 霊光石があったよ。


「ま、マジか……!」


 希少鉱物の中でも相当希少鉱物の霊光石。


 魔光石に似た鉱物であるが、魔光石よりも自然発光が弱く、まるで幽霊のようにか細く光るためその名がつくという。

 しかし、その特性は極めて特殊であり、魔力を溜め込むことができるという性質がある。


 そして、採取場所であるが────……主にダンジョン化した墓所・・などで取れるとされている。

 一応、通常の鉱山でも稀に取れるというが、採掘量が少なく、また質も悪い。


 そのため、ダンジョン産の霊光石は最上とされているのだが……。


「──それが、こんなところに?」


 霊光石は墓所で産出する。

 その取れる場所が場所なだけに、ただの変質ではなく、人の霊魂が魔光石に宿り変質したのではないかという鉱物学者もいる。


 だけど、この分だと……。


「ここ墓所じゃねーし。こんな場所でとれるんじゃ、霊光石の中身ってやっぱり霊魂なんかじゃないなー。これは、魔光石の通常変質説の方が正しいんじゃないか?」


 魔光石が変質したものであるのは間違いないので、魔光石が取れる場所ならどこでも取れるのだろう。

 しかし、魔光石の光というか、採掘量という、主張が激しすぎて発見が困難──というのが正しいのではないだろうか?


「つーことは、多分『自動資源採取』でも使わない限り、これだけ魔光石が取れる鉱山だと、混じって発見できないんだろうな」


 淡い光しか出さない霊光石はボタ石として捨てられていた可能性もある。

 ……よし、試してみよう!


「さて、モンスターの気配は────……っと、」


 いた。


 じっと動かずにいるところを見るに、この鉱山に多く生息する「ケイブスパイダ―」に違いない。

 自動行動中に蜘蛛の巣に突っ込んでも面白くないし、……先に見える範囲を駆除しておこう。


 そうして、クラウスはこのダンジョンに着て初めて短剣を抜いた。


「悪く思うなよ──これも、検証のためだ」


 ギィ?!


 普段は巣を張るか、徘徊はいかいしつつネズミや蝙蝠を主食としている大人しいモンスターケイブスパイダー。

 奴らはクラウスの検証のために殲滅されるのであった。



 ギィィィイイイイ……?!

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