第11話「鉱石採取」
ガラガラガラガラガラ……。
さて、クラウスはギルドにて新たな採取クエストを受けると、いつものごとく乗合馬車に揺られていた。
今日は少々遠出しなければならない。
いつものように
『毒の沼地』や『嘆きの渓谷』は、先日、資源をかなりの量で採取していたため、奥地に入らなければ採取が困難になっていた。
別に『自動資源採取』で採取するので効率が悪くなることはないのだが、やはり魔物の危険が高いため、どうしても入り口付近で採取できるところが望ましいのだ。
そして、ソロで活動するクラウスの場合、狩場の奥で魔物と遭遇すると、周囲を囲まれる危険が大きい。
そのため、狩場入り口付近の資源を採取した場所は次に資源が回復するまではしばらく控えるのが得策だと思ったのだ。
「──そうなるとおのずと限られるんだよなー」
下級の狩場なので、そこまで驚異の高い魔物が出ることはないのだが、この前のロックリザードのような例もある。
あれは例外にしても、クラウスが単独だというのがやはりマズいのだ。
単独VS複数というのは、相手がたとえ下級モンスターでも控えたいのが本音。
もちろん、複数でも十分に戦えるのだが、囲まれてしまうと最悪だ。
だから、そう言った事態も想定した狩場が望ましい。
……あるいは、一対一で戦えるような環境。
そして、自動資源採取のほかにも試してみたいもう一つのことがあった。
……新スキルの『自動戦闘』だ。
だが、これはもう少し使える環境を考えないと恐ろしくて使えない。
そのため、まずは態勢を整える。
つまり、お金とレベルアップだ。
ゴブリンくらいに平気で試すにしても、しっかりとした装備とステータスで臨みたい。
でなければ、自動戦闘を使った後の影響が怖くておいそれと使えた物じゃない。
「ま、その前にこっちも検証しないとな」
──スキル『自動資源採取』!
ブゥン……。
※ ※
《採取資源を指定してください》
●草木類
●鉱石類
●生物類
●液体類
●その他
※ ※
そう。
『自動資源採取』には、草木類だけでなく、鉱石や生物、液体などの項目があるのだ。
今までは仮の検証のため、草木類だけにとどめていたが、何も他を試さない手はない。
というわけで、
『魔光石の採掘』
鉱山またはダンジョンで取れる魔光石の採取依頼を受けてきたのだ。
これも下級ダンジョンに多く見られる依頼のひとつ。
街中で使用される照明として幅広く使われている需要の高い鉱物だ。
その分広く採取されているため、決して価格は高くはないが、鉱山や比較的安全なダンジョンでも産出されるため、冒険者が討伐系依頼のついでに受けることが多い。
クラウスはそのうち、とあるダンジョンで出されている採掘依頼を根こそぎ貰ってきた。
「あんちゃん……。また辺鄙なとこ選んだな?」
「ん? そうかな? 昔はよく潜ってたよ」
いつもの御者に呆れられているような気もするが、気にしてもいられない。
向かう先は下級ダンジョンの中でも不人気ダンジョン、『夕闇鉱山』だ。
「そりゃ新人の頃の話だろ?──まぁ、安全っちゃ安全なんだが……」
「安全が一番さ」
爺さんの言う通り、『夕闇鉱山』の特徴といえば安全くらいなもの。
それ以外は、とれる鉱物の大半が魔光石くらいしかなく、実入りが少ない。
そのため、初心者の冒険者がたまに訪れるが、初心者を卒業した者は滅多に行くことのないダンジョンであった。
ちなみに夕闇の名前の由来は、豊富な魔光石の明かりがダンジョン全体を照らしており、ランタンがいらないくらいにほのかに明るく、夕闇の中を歩いているように感じるから──とのこと。出典:冒険者ギルド『ダンジョン歩き』参照
「今日も誰も使わないからよ、アンちゃんのためだけにルートを変更してるんだぜ? 帰りに乗合馬車は俺の奴しかないからよ、遅れるんじゃねーぞ」
「はいはい。了解っす」
御者に爺さんの心配とも、お節介とも言える声を適当に流して、依頼書を流し見る。
『魔光石の採掘』:ノルマ×20(鉱石の大きさにより、買取価格を決定する)
……の依頼書を計10枚確保してきた。
ノルマをクリアすれば、冒険者のランクも上がりやすくなる。
まずはノルマを確保しつつ、『自動資源採取』の検証もやらないとな。
「ま、幸い大した魔物もいないからよ、一応ベテラン下級冒険者のあんちゃんのことだから心配はしてないが……無理はするなよ? この前みたいな、よ」
「へーへー。先日はたまたまだよ。だけど、ありがとさん」
……なんだよ、
さりげなくディスられてるんですけど!
「まったく……」
言いたいだけ言って、さっさと次の狩場に向かうギルドの乗合馬車。
あの爺さんも、長くこの仕事を続けているだけに色々な冒険者を見てきて思うところがあるのだろうけど、
「余計なお世話だよ! さぁ、今日も採取しますか────あ、鉱石だから採掘?」
……うん、どうでもいい。
そして、いつものウォーミングアップ。
ブゥン……。
※ ※
《移動先を指定してください》
●街
●フィールド・ダンジョン
●その他
※ ※
もちろん、ダンジョンを指定。
「……ここ、久しぶりに行くなー。1年は通ってない気がする──あった『夕闇鉱山』」
ソロ主体のクラウスは日銭を稼ぐため、そして、安全を考慮してモンスターの少ないこの鉱山をよく利用していた。
もちろん、稼ぎは微々たるものだったけどね。
※ ※
《移動先:夕闇鉱山》
⇒移動にかかる時間「00:10:25」
※ ※
「さて、つるはし、スコップ──よしっと、」
ギルド貸し出しの硬化魔法処理済みのつるはしとスコップを担ぐと慣れた様子で鉱山に向かう。
じゃ、さっそく──。
「──『自動移動』発動ッ」
フッと、意識が飛び────…………気付いたときには、明るい鉱山の入り口に立っていた。
人気はないものの、どこかのんびりとした雰囲気のただよう鉱山。
たまに冒険者ではないものも、小遣い稼ぎに魔光石を採掘に来るものがいるというが……。
「今日は無人っぽいな」
ギルドのお知らせ板にも、他の冒険者がいないことを確認済みだ。
さって、
「まずはノルマ達成と行きますか」
『魔光石の採掘』クエスト×10。ノルマ20個×10──〆て、200個の魔光石なり。
ちなみに一個あたり、(小)銅貨1枚、(中)銅貨2枚、(大)銅貨5枚なり……。
(特大以上)は時価応相談。
「さて、馬車の巡回まで、サクサク採掘しようかな? それと────」
ブゥン……。
※ ※
《採取資源:魔光石(大)》
⇒採取にかかる時間「00:4:22」
※ ※
「………………うわ。さっそく魔光石(大)がとれるのかよ? 入口付近でこれとか……楽勝過ぎるな?!」
しかし、目的はそれだけではない。
ほかにも色々……。
「ま。──まずはノルマを終わらせてからにしようかね」
さぁ、お兄ちゃんサクサク掘るよー。MYシスター、風呂沸かして待っとれい!!
意気揚々とつるはしを担いで鉱山に踏み入るクラウスであった。
「…………独り言多くない、アイツ?」
そんな背中を見つめる影が一つ。
「まー……お姉さまの命令だから、やるけどさー……。なぁんで中級のアタシがあんな間抜けそうな下級冒険者の監視するんだろ────っと、見失っちゃう! 急がなきゃ」
ススス──と、音もなく、クラウスに続いて鉱山に入っていく……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます