第13話 ジョニー高橋君
私は、また吉本の家に戻り、テレビを見ながらソファでくつろいでいた。そして、吉本が帰宅した。彼は、私になぜ急にラスベガスなんだ?ギャンブルに目覚めたか?と言って笑った。私は、彼女たちがラスベガスから来ていたことや、今急成長していて、人手不足であることを教えた。また、ジョニー高橋君という日本人に会えるかもしれないという事も。
吉本は、お前、本当かと驚いた。翌日、私はアムトラック鉄道と飛行機のチケットを押さえ、半端ではない寒さの中、ボストンのまちを散歩し、本屋で写真集を眺めたり、古着屋をのぞいたり、また、カフェでコーヒーを飲んだりして時間を潰した。翌朝、吉本には、五万円渡した。お前、いいよ、こんなお金と言っていたが、いいじゃないか、世話になったんやし、と言って無理やり彼の手に握らせた。軽躁なので、気前が良くなっているのである。
そして、吉本、お前女関係どうなってるの?と聞いた。すると彼は、アメリカの白人社会でアジア系の男性は、なかなかモテないと言う。しかし、医者とかの高収入なら別だけどなとも言った。そして、日本人の男は、東南アジアだよ。すごく、モテるとも言った。
私は、でも、金持ってる日本企業の駐在員じゃないとダメだろと聞くと、彼は、そういうこと、あるいは、起業して成功してるやつとかね、と答えた。私は、彼を元気づけるために、お前は、大学院の勉強があるからその線で頑張れ、俺は日本よりアメリカの方が、おもしろそうだからグリーン・カード取りに来るわと言うと、彼はそうか、お前もせいぜい頑張れと言って笑った。
吉本が作ってくれたピザと紅茶を飲んで、ケリーとジュリアと達と落ち合うアムトラック鉄道の駅まで、車で送ってもらった。ベンチに座って待って、二人で待っていると、彼女たちが十分して現れた。
「ハイ、ケリー、アンド、ジュリア。おはよう。元気?」
「ハイ、カックン、アンド、ヨッシー。元気よ。カックン、準備は良い?」
「イエス」
「ヨッシー、お寿司美味しかったわよ。ありがとう。じゃあ、レッツ・ゴー」
「じゃあな、吉本。また、連絡するわ」
「おう、向こう行って、また話聞かせてくれや」
私は、彼女たちとまず、ニューヨークのJFK国際空港に行って、彼女たちを見送った。ケリーは、彼女の電話番号を教えてくれていた。その後、私はニューヨークのまちに戻り、YMCAにチェックインした。私は、ニューヨークを観光してみたかった。
ボストンと同様、寒いがエネルギッシュな雰囲気のある混雑したまちを歩き、昼に中華レストランで焼肉弁当を食べ、セントラル・パークに行き、夜は、ブルー・ノートのお店に足を運び、ここでマイク・スターンも演奏しているのか、彼のライブが今晩あれば良かったなと感慨に耽った。
YMCAに戻って、ケリーに電話したらジョニー高橋君と連絡が取れて、彼のアパートに泊めてくれる手続きまで取ってくれていた。そして、ラスベガスの国際空港にまで迎えに来てくれるという。翌朝、チェックアウトをして、昼の便でニューヨークをあとにした。ラスベガスに着くと、わざわざ、ケリー、彼女の恋人のジャック、そしてジョニー高橋君が出迎えてくれていた。
「カックンさんですか?俺、ジョニー高橋です」
彼も生き生きしていた。ケリーの恋人、ジャックは、弁護士になるためロー・スクールで勉強をしていた。その後、空港でケリーとジャックとは別れて、高橋君がリオ・カジノホテルのバフェに連れて行ってくれた。彼は、トヨタの4WDに乗っていた。
車中、高橋君は、私にいくつかと聞いてきた。30才だと答えると、俺のひとつ年上ですねこれからは、敬語を使いますと言う。私は、アメリカなんだから、そんなこと良いよと言ったが、彼はアメリカンフットボールを高校でやっていて、年上は絶対なんですと譲らなかった。
リオ・ホテルの食べ放題のバフェは、本当においしかった。ただ、アルコールの提供がないのが残念だった。席で、私は早速、高橋君に仕事の話を聞いてみた。すると、ツアーガイドの仕事ならいくらでもあると教えてくれた。そして、彼も今、アルバイトをしていて、今夜も行くと言う。
私は、「そう!仕事はあるんだね!そこから、グリーンカードにつなげられるんだろうか?」と聞いた。すると、まず、留学してソーシャル・セキュリティ・ナンバーを取る必要があると教えてくれた。そして、コミュニティ・カレッジがあって、大学よりも授業料が安いとも教えてくれた。
しかし、私は、もう勉強はこりごりなんだよと言うと、彼は、大学で経営学を学んでおり大学院で経営学修士も取ろうと考えていると言う。私が、経営学修士ってMBAだよね、エネルギーがあるなあ、俺なんか、日本の会社でもうクタクタだと言うと、少しずつエネルギーをチャージすれば良いんですよとアドバイスを受けた。
「ところで、カックンさん、今夜のナイト・ツアーのバイト、一緒に行きます?」
「ナイト?」
「ストリップですよ」
「ああ、ぜひ」
まず、彼は、働いている会社に行って、ツアー用のバンに乗り換えた。そして、お客さんをMGMホテルにまで迎えに行った。お客さんたちは、7人の日本人男性で、同じ職場の人たちだった。そして、ストリップに行ったのだが、ダンサーと呼ばれる若くてきれいな水着姿の女の子が百人ほどいて、バリスゴ!
「高橋君、何コレ?すごい世界やね」
「何しろ、ラスベガスですからね。クオリティ高いですよ」
「しかし、高橋君、ガイドが様になってるね」
「カックンさんも、ちょっと、やればすぐなれますよ」
私は、アメリカで生き生きしている高橋君もうらやましく思った。なお、この1997年には、タイ政府によるタイバーツの変動相場制導入により、アジア通貨危機が始まった。また、IMFによる韓国救済がへの介入が始まっていた。
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