プロローグ 商人に伝わる話

多くの馬車がガタガタと音を立てて、草原の道を走っていた。

この馬車群を率いるリーダーの商人は少し不安を抱いていた。

この商人は次の目的地の国、アンドロ帝国へ行くのが初めてだった。

アンドロ帝国は本が売れる国であると言うのを知っていたので、商人は自国で新しく発行された本をいくつか見繕ったのだが。


『アンドロ帝国で本を売るなら、本は最低三十冊用意しておかないといけないぞ』


知り合いの商人にそう言われて、「なぜ?」と商人は尋ねた。


『アンドロ帝国は国に三十個の図書館があるんだ。だから国に売るとなれば最低でも三十冊は必要だ』


そう言われたので、数種類の本を三十冊以上用意して、アンドロ帝国へ向かったのだが。

商人がこの商売がもし失敗すれば、かなりのお金の無駄使いをしたことになってしまう。

おまけに大量の同じ本を抱え込んでしまうことになるのだ。

彼の不安は募るばかりだった。

しばらくして、商人が顔を上げると奥にアンドロ帝国が見えてきて、向こう側から自分と同じような馬車群がこちらへやってくるのが見えた。

商人は馬車を止めて、向こう側から来る一番先頭の馬車に乗る商人に尋ねた。


「すいません。アンドロ帝国で本を売るなら三十冊は必要だと聞いたんですが、それは本当のことですか?」


すると、その商人は嬉しそうに答えた。


「ああ、その通りだ!私も初めて来て、不安だったが持ってきていた本が全て売れたよ!」


その言葉を聞いて、彼は安堵した。


「それにアンドロ帝国の農作物や発明品は素晴らしい物だ!これでまた、一儲けできそうだよ!」


その言葉を聞いて、彼の不安は期待へと変わっていった。


「そうか、その言葉を聞いて安心したよ。ありがとう、質問料のチップを払おう」


そう彼がいうと、その商人は。


「構わないさ。今私は物凄く気分がいいんだ。君の商売が上手くいくことを願っているよ!」


彼はその商人に感謝を伝えて、そして別れた。

そして、期待を胸に馬車を走らせた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る