第38話 吸血鬼○○○の流浪15

ショタ「俺を呼んだか?」


 突然現れた張本人にどよめく群衆。カシラが合図して黙らせる。


盗賊頭「お前か? ウチの手下たちを襲ってるってのは?」


ショタ「ずいぶんな物言いだな。てめえらも殺しや盗みでメシ食ってんだろうが」


盗賊頭「テメェ…何人死んでると思ってんだ…」


ショタ「お前はいままで襲った獲物の数を覚えてるのか? 律儀なこった」


盗賊頭「ッ!……よくそんな態度が取れるなァ?この女が見えねえのかッ! 」


 カシラは女に繋いである縄を引っ張る


女  「旦那様…申し訳ありません…」


 ショタは顔色一つ変えず告げる


ショタ「その奴隷がどうした? 欲しけりゃくれてやるよ。奴隷なんざまた買えばいい」


 女は顔面蒼白でうつむく


盗賊頭「騙されねえぜ! 調べはちゃあんとついてんだ。ずいぶんとこの女にご執心らしいなァ? てめえは今からこの女が見てる前で指一本抵抗せず殺されてくンだよォォ!」


ショタ「やっぱ逃げよっかな。どうせ俺も女も殺すんだろ?」


盗賊頭「てめえが死んだら女は逃がしてやるよ」


ショタ「本当かぁ? 」


盗賊頭「誓う誓う。誓うぜェ!! 」


ショタ「ならさっさとやれよ。ホラ」


盗賊頭「殺れ! 野郎共ォ! 」


 仇討ちに盛り上がった賊どもが殺到する。ショタの身体に次々と刺さる槍。剣。刀。鎌。折られ、砕かれ、潰れるさっきまで人体だったもの。黒赤い血溜まりに肉と骨の残骸が沈む。


盗賊頭「死んだな! 」


 オオオオォォォ!!!

 勝ち鬨の歓声を上げる賊たち。


手下1「ところでカシラッ! 本当に女を解放するんで? 」


盗賊頭「バァッキャロゥ!! ンなワケねーだろうが!! 全員でマワして焼いて食うんだよォ! それ(女)も仇のうちだぞ! 」


 女に迫る男たち! 


ショタ「やーーっぱり嘘じゃん」


 全員が振り返った。

 血の池の中で生首が喋っていた。それはみるみるうちに身体が再生していき頭の高さが上昇していく。死んだふりのため停止させていた体組織再生を復帰。数十秒で全回復までもって行く。

 傷一つ無くたたずむショタ。

 そのショタがふと消える。

 同時に上がる賊どもの首と断末魔。隣から、前から、後ろから、血と叫びと肉が噴き上がる。

 打ち上げられ、胴と離れたことにまだ気づいていない生首の顔や口が空中で動いている。武器を構えるのが間に合った者たちが居る。だが彼らも構えた銅剣や軟鉄剣ごとショタの爪に斬られていく。

 集団の外周部に居た者たちが逃げ出す。しかし逃げる動きを見せた者から優先して殺されていく。

 逃げ場の無い賊たちはやがて集団中央に向かって寄せ集められる。1秒でも長く、隣の奴より後に、我先にと内側へ奥へと自ら集まっていく。

 この虐殺はほんの数分の出来事である。だが【秒・分】どころか【時(60分)】すら発明前のこの時代、かれら賊にとってこの数分は永遠であった。

 夜の静寂が戻った。血と死体で埋め尽くされたこの場に生きた人間はただ一人。掠われていた奴隷女だけである。


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