第18話 アトランティス 6

【完結済み】?あれはウソだ


1700時。日没直後。

死体を確認しに来た研究員たち。広場一帯は髪と内蔵を燃やしたようなキツい悪臭で一杯だった。檻の中には原形をとどめられず構造崩壊したドロドロの肉塊が小山となっていた。


研員1「死んでるよな?」


溶岩や毒物用の超長採取棒で檻の隙間からつつく。


研員2「それを確認するのがオレタチだぜ」


研究員2が撮影しながら言う


研員1 「えー対象は形象崩壊。表面は腐肉のような質感。日没後ながら今も煙状の気体が噴出中。原形をたもつ器官は認められず。対象からは酷い悪臭。これより検体採取を試みる」


フォーク状の先端部を肉塊に刺す。そこで止まる


研員2「どうした?」


研員1「引っかかりやがった。骨かなんかだろ。クソっ、びくともし」


死んだ。

カメラを檻に向けていた研究員2がなにか倒れる音で振り向くとそこには吸血されて急速に顔が青くなっていく同僚の姿。急性貧血によって即時で気絶したのだ。よく見ると採取棒の先からつる植物のような細糸が棒をつたって這い伸びてきており、蔓の先端が同僚の手に突き刺さっている。

カメラを捨て慌てて同僚を引き剥がすオレ。幸運にも蔓は簡単に引きちぎれた。そのまま建物ドアまで全力疾走で逃げるオレ。同僚をドアに寄りかからせるとカメラを拾いに戻るオレ。


研員2「対象は健在。採取担当は負傷。検体採取及び接近は危険と判断し帰投する」



翌日明朝。

直射日光が当たり始めるまで待ってからカメラを載せたキャタピラクローラー機動のUGVロボットが接近を開始する。

その映像が中継されてくる。

暗黒会議室。


議長「状況を。研究部」


研員2「昨日終盤の状況と同じです。日光照射とともに表面の灼けと匂いの噴出が始まりましたがそこまで止まっています。この表層の肉塊状組織が盾となって中まで日が通るのを防いでいるとみられます」


研究部長「観測からの計測ですがこの肉塊の体積と最初の人間体時の体積とが合いません」


議長「どっちだ?」


研究部長「増えてます」


安保部長「じゃあ何か?あん中に全快状態で丸々入ってるってコトか??」


研究部長「可能性は高いと言えます。研究部は安保部による戦闘駆除を申請します」


安保部長「自分らは関係ないと思って好き放題言ってんじゃねえぞオラッ!誰がやると思ってんだコラァ!諜報部の報告読んでねえのかテメッコラー!!」


研究部長「安保部の打撃力は重々承知ですよ。充分やれます」


安保部「ッッッッザケてンじゃねえぞテメッ!!つーかもうサアムウト男の方さっさとれよ。元々そういうハナシ(二つが組んだことが問題。片方づつなら問題ない)だったろ」


諜報部「諜報部として現時点ではその選択肢オプションは反対です。ミナ対象サアムウトこの男のいうことは聞く傾向にあり、これが居なくなると完全に制御不能予測不能になると思われます。そもそもこの男が人質として機能しているからミナ対象はいまだにおとなしく殺されているんですよ。これが無くなれば即大手を振って暴れ始める名分が立ちます」


議長「そうだ。その男は結局人間だったのか?研究部」


研究部長「残念ながら間違いなくただの人間です。ただ」


諜報部が引き継ぐ


諜報部長「ただ、あの拘禁部屋を説明も受けずに順応し使いこなしています。石器時代の原始人が、です。依然正体は不明です」


議長「だが、使えそうなカードはそれぐらいしか無いのだろう?」


沈黙。誰も声上げない


議長「一度対話してみる必要があるのだろうな」

議長「通訳クレイタルを呼べ」








ナレーター「死んだと言いましたが死んでませんでした。お詫びします」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る