第4話 転生者サアムウト

ヒトは死んだらどうなると思う?そう異世界転生だね!僕、二階堂俊明はいろいろあって死んだんだが(これ以上何も訊くな)死後空間にて通知があり僕は別世界に転生できると知って思わずガッツポーズした。きっと反則チートを何十個ともらって銀髪吸血鬼ロリババアやチュートリアルヒロインとくんずほぐれつしながらヌルく俺つえええええして富も名声も女も全てを手に入れるんだろうなあ!!!!!!



そう思っていた時期が僕にもありました。



      ●



この世界に生まれてもう15年になる。15歳だな。今生の名はサアムウト。周りは砂漠、大河、そしてピラミッド。そう、古代のエジプトだ。今日の夕飯を紹介しよう。麦粉の無発酵パン、知らない草、何かの肉が少し、なんらかの果物。これでも特別高価でもない普通の外食一回分だ。古代なんて最悪死ぬまで麦粥もありうると思ったが結構流通があって助かった。去年から徴税書記になれたので収入もまあまあマシになった。この時代、読み書きと加減乗除ができるだけで現代でいうブランド大卒扱いだ。モブ市民としては安泰と言っていいだろう。だがここまでだ。ここまでなんだ。

結局チートも美少女ヒロインもなにも無かった。ここが地球風異世界なのか現実地球の過去なのかも俺にはわからん。そこまで古代エジプト知らねえんだよ。現代知識チートも俺自身大したモノは覚えてないし(行くの分かってれば予習したのに・・・)この出生立場では使えるものがロクに無い。それに医療。天然痘やコレラの類いがその辺に居るはずなんだよな。虫歯もヤバい。驚くべき事にこの国には歯医者があったが抜くだけだ。別に、このセカンド人生が惜しいとかではない。どうせ2回目だ。「死ぬほど痛い」がどれくらいかは現実で死ぬときに味わったので死の恐怖もそんなに無い。ただそんなつまらん死に方はちょっとなあ・・・というだけで。

そういうわけで今は下級市民の上の方って感じの人生だ。

このままでいいのか?

欲しいものは欲しがらなければ手に入らない。

2回目だからこそ気軽に命を投げ捨ててもいいんじゃないか?

材料はある。最近変な噂が流れはじめた。

曰く、外国の侵略軍が野営すると朝には全員死んでるとか。

曰く、墓荒らしをやると翌朝までには磔にされて殺されるとか。


サアム「調べてみるか・・・」



       ●



盗掘団が死んでいく。

銀髪の少女が腕力だけで腕を引きちぎり、首を噛みちぎる。人類に出せないスピードで走り回り、慣性を無視するかのような急な方向転換。

このファンタジー存在。

間違いない。ここは異世界。もう後の歴史すら気にする必要は無い。

俺は俺の好きに生きるぞおおおおおおおおおぉぉぉ!!!!!

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