第6話蛇の王は再臨し、三人の姫たちと決戦する

 ふふふっと不気味な笑みを黒沼は浮かべていた。

「これは僥倖といものだ。三姫が我が前に現れた。この娘を毎夜なぐさみものにしていたこのものたちを始末したし、次はお主たちの番だて」

 いひひっと低い声で黒沼は言った。

 だが、その声は少女のものでなく完全に男のものであった。


 つかつかと黒沼の前に歩み寄ると椿は黒沼の頬をばちんと力いっぱいひっぱたいた。

「黒沼巳香子、しっかりさなさい。そんな魔物になんか心をゆるしちゃあ駄目よ」

 凛とした声で椿は言った。

 怪物を目の前にしてこの勇気はさすがといえた。


 はっと黒沼の表情が変わる。

「本当はこんなつもりじゃなかったの。私、ずっとこの人たちの相手をさせられてたから、解放してくださいって神社にお願いしたの。でもそしたら肩に蛇が生えてきて……」

 そう言った直後、黒沼の表情がまたあの怪物のものに変化した。

「ふん、娘よ。おとなしくその体を余に渡すのだ。さすればそなたを辱しめたものたちに地獄の責め苦をあじあわせてやろう」

 完全に黒蛇王となり、黒沼は言った。


「地獄に落ちるのはあんたよ‼️」

 そう声をあげたのは梅だった。

 梅は両手で黒沼の左肩に生えた蛇をむんずとつかんだ。

「そうよ。乙女の体をのっとるなんてこの桜がゆるさないんだから」

 そう言うと桜は右肩の蛇をつかんだ。

「いくよ」

 梅が叫ぶ。

「あいよ」

 桜が答える。


 二人は同時に肩に生えた蛇を引き抜いた。

 あろうことか、ずるりと蛇は抜けてしまった。

「き、貴様ら。このザッハークのよりしろを……」

 黒沼は苦しそうにそううめき、地面に倒れた。


「知ったことか‼️」

 そう怒声をあげ椿はその長く、白い足で地面をのたうちまわる二匹の蛇を何度も踏みつけた。


 骨を粉微塵に粉砕された二匹の蛇は完全に動かなくなった。


 え、この三人強すぎるんだけど。


 僕の感心をよそに桜はVサインをしていた。

「怖かったよ、アッキー」

 そう言い、梅は僕に抱きついた。

 いやいや、あんた素手で蛇をつかんでいたじゃないか。

「あ、ずるい私も」

 そう桜はダイブするように僕に抱きつく。

「私も怖かったよ‼️」

 にこやかに僕に抱きつくのは椿だった。

 えー、あんたこそ足で魔蛇を踏みつけてころしたじゃないか。


 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る