第5話過去の記憶と現代の敵

 空中に放りだされた僕は、青い夏の空を見た直後に意識を失った。



 目蓋を開けるとそこにいるのは、異形の怪物だった。

 両肩から蛇を生やし、こちらを見ている。

 六つの瞳に殺意しかこめられていなかった。

「覚悟せよ‼️」

 その声は椿のものだった。

 白い巫女の服を着た彼女は神々しいまでに美しかった。

 黄金の刀を抜き放つと一息にその蛇を生やした男に斬りつけた。

 男の両腕、両足は簡単に斬りとられ地面に飛び散った。

 床一面、その怪物の血で真っ赤に染め上げられた。

「やっ‼️」

 その掛け声と共に突きだされたのは白銀の槍の穂先だった。

 その銀の槍を持つのは巫女の衣装に身を包んだ梅であった。

 巫女の着物を着ていてもそのボリュームたっぷりの胸は隠しきれていなかった。

 巨乳を揺らしながら、梅は蛇の怪物の胴体を貫いた。

 ぎゃあああと耳を塞ぎたくなるような悲鳴をその蛇の怪物はあげた。

 槍を引き抜くと蛇の怪物は床を醜くのたうちまわった。

「とどめだ‼️」

 そう叫び、大きく弓を引き絞るのは桜だった。

 桜もまた前の二人と同様に巫女の服を着ていた。

 気合いと共に青銅の矢じりが空を引き裂き、飛来する。

 連続してもう一つ矢を放つ。

 二本の矢は次々と蛇の怪物の両目を打ち砕いた。


 三人の攻撃により、その蛇の怪物は動かなくなった。

「お見事です、姫ぎみがた」

 僕は腰の太刀に手をかけ、言った。

 どうやらこの言葉は僕の意思とは無関係に発せられている。

 まるで映画をみているような感覚だ。

 椿、梅、桜は僕のそばにかけよる。

「あなた様のおかげです」

 うれしそうに椿は言った。

「よかった、これで黒蛇王くろへびのおうに嫁がなくて良いのですね」

 と梅はおおきな胸に手をあて、言った。

「そうよ、これでわらわは清彦殿の妻になれますね」

 にこやかに桜は言った。

「それはこのツバキノヒメも同じです」

「ウメツヒメも清彦殿の妻になるのじゃ」

 と椿と梅がいった。


 三人はそれぞれに言い、にこやかにわらった。

 だが、その平和な光景も一瞬で打ち砕かれた。

 肉体のほとんどを打ち砕かれた黒蛇王は最後の力をふりしぼり僕にとびかかった。

 その鋭い牙が僕の喉に深く深く突き刺さり、首の骨を粉砕する。

 僕は残された力を振り絞り、太刀を引き抜き、それを黒蛇王の頭に突き刺した。

三人の姫たちの悲鳴をきいた後、僕は再び記憶を失った。



 あれ、なにかやわらかいぞ。

 僕はもみもみとその二つの巨大なマシュマロのようなものを両手で揉んだ。

 手の隙間からあふれるそれは極上のやわらかさだった。

「いやあん、アッキーたら」

 その声は梅のものだった。

 目を開けるとそこには梅の可愛らしい顔があった。

 翠の目で僕を見ていた。

 僕は梅に抱かれているようだった。

 地面に降りた。

 どうやら、四階から落とされたが無事のようだった。

「これぐらいの高さから落ちたからといってどうということはない。だが、それよりももっと酷い状況だぞ、これは……」

 椿が真剣な眼差しで言った。

「お兄、これまじでやばいよ……」

 桜はごくりと唾を飲み込んだ。


 椿と梅と桜はある一点を見ていた。

 僕もその方向を見る。


 そこには下着姿の黒沼巳香子がいた。

 彼女の足元には数人に男が傷だらけで倒れていた。

 そして血だらけの黒沼巳香子の両肩には蛇が生えていた。


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