第6話:献策

「恐れながら陛下、これでも私は皇族の一人でございます。

 私が先に話すとそれに阿る者が現れるかもしれません。

 ここは下位の者から聞かれるべきかと愚考いたします」


「仲徳の申す事もっともである。

 順番に思う所を申してみよ」


 これは仲徳殿下の献策なのでしょうか、それとも誘導なのでしょうか。

 保和殿に集まった文武百官が下位の者から順に思う所を話します。

 ですが多くの者が保身に走って曖昧な事を言い断言しません。

 なんと醜い事でしょうか。

 次に姜謝公台様を恐れて断罪を主張する者が多いです。

 少数ながら父上を庇ってくれる方もおられました。

 最後に仲徳殿下の番になりました。


「さて、ようやく仲徳の番になったな。

 だが仲徳のお陰で既に多くの事がよく分かった。

 だから今更仲徳の話を聞いても朕の考えは変わらない。

 だが仲徳の考えにはとても興味がある。

 思う所を隠すことなく話してみよ」


「有難き幸せでございます、皇帝陛下。

 まずは最初に問題となった姚袁微の処遇から話させていただきます。

 姚袁微は何も知らなかった、だから仁道を重視して罪一等を減じます。

 次に武官を妻妾に迎える事は、罪ではありませんが常識に外れます。

 姚袁微に、妃候補に選ばれた事に関する罪はありません

 兄上に諫言したうえで罪一等を減じます。

 次に姚袁燿と家族ですが、姚袁微と同じ理由で罪二等を減じます。

 しかしながら報告しなかった事は大いなる罪でございます。

 家族ともども士族の位を剥奪して平民に落とします。

 一番問題なのは姚孫武でございます。

 全ての元凶はこの男から始まっております。

 家内を治める事もできず、実の娘を捨てるなど仁道に劣ることでございます。

 まして実子が第一皇孫の妃候補になった事は分かっていたはず。 

 厳罰に処さなければいけません。

 根本法に違反した罪で死罪を相当すると思われますが、そうなると徒党を組んで皇位継承に加わってはならないという、根本法に反した他の文武百官も死罪にしなければなりません

 そこまで申し上げると皇帝陛下の権限に触れてしまいますので、何も申す事はできません」


「くつ、くっ、くっ、くっ、しっかりと口にしておるではないか。

 近衛兵、文武百官全員を捕らえよ。

 徒党禁止の根本法に違反したかどで全員死罪とする」


「「「「「お許しください陛下、どうかお許しください皇帝陛下」」」」」


 あっという間の事でした。

 事前に皇帝陛下と仲徳殿下が準備されていたのかと思えるほど、鮮やかな動きで近衛兵が文武百官を拘束しました。


「さて仲徳、褒美をとらせたいが、何を望むか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る