第22話 激痛との戦い

 「こんなのが何ヶ月も続いたら、気が狂うよ」と呟いていたのだが、結局この痛みは年末クリスマスを迎えても回復しなかった。

 もちろん、ネットでいろいろ調べることは止めなかったが、この頃は原因がどうのというより、とにかく痛みを止めたいだけだった。職場でもさすがに見ちゃいられないということで休暇を言い渡された。2019年1月のことである。

 一応年度内、3月末まで仕事を休んで治療に専念するということで、私は妻の実家に移った。食事以外はほぼ寝たきりで、アマゾンプライムとネットフリックス三昧。どうしても私にしかできない仕事は、バソコンで在宅ワークとさせてもらったが、この時はベットに座るだけでも身体が痛く、5分と起き上がっていられない。しまいには尻のあたりまで痛みが広がっていった。こんな状態だから、歩くのはさらに一苦労で、ほんの2、3分先のスーパーに杖をついて昼飯を買いに行くのさえ、たいへんな苦痛をともなった。だから寝ているだけの生活になり、さらに筋肉が落ちて歩けなくなり、という悪循環だ。

 T病院に加えて、池袋のペインクリニック、駅を挟んで東口のカイロプラクティックセンター、さらにもう一件痛み止めの注射を背中に打ちまくるところ、と一日おきぐらいにタクシーで通った。給料も入ってこないから、私の小遣いは完全に底をついた。もっとも、こうなると金なんかどうでもよい。ついには、あのときインドで死んでりゃよかったとさえ思うようになった。昼間は妻も仕事に出ているため、猫とベッドに横たわっているしかない。アマゾンブライムもネットフリックスも、ホラーとアニメ以外はほとんど全部見てしまった。

 結局、病名は「繊維筋痛症」ということになり、池袋のペインクリニックはこちらの専門でもあったため、その薬が劇的に効いた。

 2019年の4月、とりあえず椅子に座れるようになり、なんとか仕事に復帰できた。ただ、ずっと寝ていたために足腰の筋肉は極度に衰え、玄関で靴を履くのもたいへんだったり、和式トイレでへたにしゃがむと二度と立ち上がれなくなったりと、最初は苦労した。それでも徐々に体力も戻り、以前の生活を取り戻していった。目の方も、血糖値が落ち着いたせいか、盲点はかなり減り、眼底検査でも出血痕は消えたと言われた。4月の検査では、次に来るのは半年後でよい、と言われた。

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