第10話 日本酒通からバーボン党へ

 酒のことは後で述べると書いたので、ここで酒の話に移る。糖質ゼロの蒸留酒というと、焼酎、ウィスキー、ブランデーということになるが、2016年以降、どういうわけか私の場合はウィスキー、中でもバーボン、中でもメーカーズマークというのが好みに合致した。あの、キャップ部に赤い蝋を垂らしたみたいなゴム?がついているやつだ。アルコール度数は45度。もちろんストレートで味わう。特にこの酒は私にとっては甘みが感じられ、ほぼ週に1本空けるようになった。アルコール度数が高い酒はアルコール中毒になる確率も高い、などということは、あまり頭になかった。

 しかも悪いことに、こうした蒸留酒は値段が高くなるほど味や香りがよく、長期熟成のためだろうか、アルコール度数も上がっていくのだ。たまに奮発して、ワイルドターキー8年ものや、ノブクリークの黒ラベルなんかも楽しんだ。アルコール度数それぞれ、50度、60度。コンビニで売っている40度のIWハーパーとかフォアローゼスなど、不味くて飲めたものではない。一応、ジャックダニエルだけはマシで、3リットルの大瓶をしばしば購入した。応募シールがすぐ溜まり、黒いオリジナルTシャツを何枚も手に入れた。

 ウィスキーであるゆえ、ショットグラスでチビチビやるのだが、何杯も飲むからすぐに消費してしまう。いつのまにか、山へ行く時もフラスコを持っていくようになったし、仕事から帰るとまず一杯、風呂から出たら1、2杯。晩飯は当然つまみとバーボン。ある時飲み会で、友人からアル中じゃないかと言われた時に、確かになとも思った。それでも、一晩で一本空けてしまうようなことはなかったし、いわゆる本物のアル中は、まだまだ先だと思っていた。

 酒を飲みすぎると肝臓を壊すと言う。私は休肝日など無縁で、連日度数の高いアルコールを流し込んでいた。肝臓もいつかは壊れるかもしれないが、それはもっと年をとってからだろう、と気にしなかった。

 激痩せして癌を覚悟した時も、もし膵臓癌なら長くはない、どうせ死ぬなら肝臓が壊れようがどうなろうが、好きなバーボンを好きなだけ飲んでやれと、やけくそになっていたようにも思う。そういう意味では、2018年夏に文字通りぶっ倒れたことは、私にとっては却ってよかったのかもしれない。もし、そうでなければ、私は確実にアル中で肝硬変になっていたはずだ。今このように手記をしたためることもできなかっただろう。ただ、これを読んでくださっている方々には申し訳ないが、私が倒れるまではもう少し時間がいる。

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