16・Twiiterでほぼ毎日投稿、当サイトでの更新は不定期
・雨と珈琲と
昔から二人揃って浮いていた。集団からあぶれた者同士仲良くするわけでもなく他人以上友達未満のような関係が続いていた。それが少しずつ変わり始めている。
「一緒に帰ろう」
先に声をかけてきたのは彼女だった。大学も同じという偶然ではなく、その行動にまず驚いてしまった。
「嫌かな」
「ううん」
・サボり
朝日に身も心も焼かれるような、そんな心地で毎日生きている。何かが焼き切れてとうとう学校最寄りの駅を乗り過ごし、テキトーに数駅先で降りて今。公園で見知らぬ子どもに絡まれている。
「お姉ちゃん学校は?サボり?」
ランドセルを背負った彼女もサボりなのだろう。微かな親近感から、口を開く。
・わがまま
「君を不安がらせるよりずっとマシだよ。私のプライドとか意地とかそういうの、全部ゴミだ」
抱きしめられてるから彼女の顔がよく見えない。自分の我儘で彼女に無理をさせていないか、彼女が望み通りにしてくれたら今度はそんな不安が心中を占めていく。ゴミはお前じゃないかと嘲笑う声が脳裏に響く。
・泥の底
彼女にとってはなんでもないことでも天変地異だとか青天の霹靂だとか大仰な表現が冠されるものなのだ。何気ない親切、笑顔、挨拶、その全てがこれまでの生に存在せず、知らぬ間に深い絶望と渇望とが結びついた心根を掻き乱してくる。彼女と友人になれたことが奇跡で、その先なんて想像もできないのだ。
・酔う
あまり見られたら気になるんじゃないか、とは思っても目が離せなかった。彼女がグラスにビールを注ぐ姿。バーで働いてるのだから当然のように行うそれが、何故だか心を捉えて離さない。
「ビールお好きなんですか?」
2本目の注文だからだろう、愛想のいい笑みで尋ねられ頷く。既に酔いが回っていた。
・血よりもこい
「もっと早く、こんなに大人になってからじゃなくて、お前と出会えてたらちゃんと姉妹になれたかもしれない……うざい友達じゃなくてちゃんとお姉ちゃんって呼べたかも……」
赤ら顔の彼女はそのまま寝入ってしまった。腹違いの妹がこぼした本音のようなものは、酒の肴にするには少し刺激が強かった。
・塩と砂糖と胡椒
「気難しいよあいつ。何が琴線なのか全然わかんないってか」
「でも好きなんだよね」
「好きなんだよなぁ困ったことに」
真正面からぶつけられる惚気にもとうに慣れた。ハラハラさせられる距離感だった友人たちが手を取り合って楽しげなのは素直に嬉しいことだ。
「で、また喧嘩したの」
「そう……」
横書き表示推奨。2021.04.07から2021.04.13までにTwitterへ投稿した約140字の創作百合小説をまとめました。
最終更新日・2021.06.23
・雨と珈琲と(特に仲良くはないけど昔からよく一緒にいる女たちの話)
・サボり(学校をサボった女子高生と小学生の話)
・わがまま(いつも不安でいっぱいな女の話)
・泥の底(ひとりぼっちだった女と優しい女の話)
・酔う(ふらりと酔ったバーで好みの女と出会った女の話)
・血よりもこい(腹違いの姉と妹の話)
・塩と砂糖と胡椒(お付き合いしてる友人たちを見守る女の話)
「pixiv」と「小説家になろう」にも投稿しています。
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