11・Twiiterでほぼ毎日投稿、当サイトでの更新は不定期
・むっつり従者とわがままプリンセス
「姫様、またそんなところに隠れて……」
木を見上げると枝の中に姫の姿が見える。半べその彼女は嫌々と首を振って降りようとしてこない。
「勉強もちゃんとしないと立派なお姫様になれませんよ」
「アイリーンがいるから大丈夫だもん」
「私はただの従者ですよ」
深々と溜息をつき、幹に手をかける。
・夜明けのララバイ
「眠るのが怖い。起きたらまた明日が来て1日が始まっていくのが嫌なの。寝なくたって明日が来るのはわかってるよ、寝ないと身体壊すのもわかってる。それでも……」
机に向かい作業をしていた彼女が振り向いた。同居人の目のクマは以前より酷くなっている。
「毎日楽しく生きてる君にはわからないよ」
・危ない女の帰る場所
彼女は眠っていた。部屋に置いてきたボロボロの上着を抱いて、顔を擦り寄せて。
「煙草臭いっていつも文句言うくせに」
寝顔を指の背でそっとなぞる。今しがた誰かを冷たい肉の塊にしてきた手は、彼女の体温を貰い受けそっと熱を帯びる。
この温度が捨て難い。死ねない理由としてはそれで十分だった。
・たがためのモノガタリ
「私はただみんなを守りたかっただけなのになんで!こうなるのよ!」
膝から崩れ落ちる彼女の前にしゃがみ込む。彼女は項垂れたまま顔を上げない。このままでは、困る。
「お前が守りたい『みんな』はもう一人もいない?」
「……いや」
「なら立て『主人公』。お前が、この道を選んだんだから」
・小さな整備士と大きな子ども
「左手は悪いことをする手なんだ。私にくっついてる右手は偽物。残った左手は悪いことをするための手。だから私は、あなたに触れない」
「なにそれ」
「いつかわかるよお嬢さん」
左手でおでこをつつかれる。子ども扱いされ頬を膨らませるのを、整備中の右腕が外され隻腕の彼女は愉快そうに見ている。
・すきのかたち
「私、君のことけっこう好きなんだ。付き合いたいって思えるくらい。君はどう?私のこと好き?」
「……触りたいって思えるくらいには」
彼女に手を握られる。力を入れたり抜いたり、手の形を確かめるように。
「このくらい好き」
「わかりにくいよ」
彼女の好意をどう解釈すればいいか、判断に迷う。
・ゆるし
彼女はこちらに身体を預けて眠っている。完全に無防備な姿だ。
「私が悪い奴だったらどうするんだ」
近くに置かれている鞄から財布を盗む、痴漢をする。彼女はそういう可能性を一切考えていないのだ。
「君はしないでしょ、悪いこと」
「……狸寝入りかよ」
悪戯っぽい笑い声が肩の近くからした。
横書き表示推奨。2021.03.03から2021.03.09までにTwitterへ投稿した約140字の創作百合小説をまとめました。
最終更新日・2021.06.22
・むっつり従者とわがままプリンセス(従者のことが大好きなお姫様と仕事以上の感情を姫に抱きたくない従者)
・夜明けのララバイ(眠るのが怖い女と寝てほしい女の話)
・危ない女の帰る場所(危険な仕事をしてる女が帰る場所を見つけた話)
・たがためのモノガタリ(自分をマスコットと言い張る雌型の悪魔と契約し「主人公」になっちゃった女)
・小さな整備士と大きな子ども(将来義肢の整備士になる少女と右腕が義手になっている大人の女)
・すきのかたち(コミュニケーションが不器用な女たちの話)
・ゆるし(ひねくれものの女とその女に無防備な姿を見せる女の話)
「pixiv」と「小説家になろう」にも投稿しています。
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