10・Twiiterでほぼ毎日投稿、当サイトでの更新は不定期

・禁煙


「忘れるなんて酷いな先生、二十歳になったらまた好きって言いに行くよーって。言ったじゃん」

制服を纏ってない彼女はすっかり顔立ちが大人びていた。人を食ったような態度は変わってないから、煙のようだという印象がより強まる。

「忘れてたわけじゃないよ。ただ、本当に来るとは思わなかっただけ」






・恩讐


「なんで私なんだよ。君がいないところに行きたい。何も考えなくて済む、苦しまなくて済む、素晴らしい楽園に」

「行きゃあいい」

「でもついてくるんでしょ」

「うん。君がいるならどこまでも」

彼女は肩を震わせて笑った。生きている限りこの世のどこにも楽園は無いと悟った、清々しい笑みだった。






・狩人のお弟子さん


なりゆきで拾った双子が寄り添って眠っている。これからどうするか焚き火を眺めながら考えた。

珍しい瞳の色にこの美しさだ。いつか捕まって売られるかもしれない。でなくとも彼女たちはどこかから逃げ出してきたのか生きる術を、世界を知らない。

また厄介ごとを背負い込んだのだと、狩人は自覚した。






・褒め上手


「頑張り屋さんだよね」

「そうか?」

ただ鞄をずっと背負っていただけだ。まだ委員会が終わらない友人を待つ間、別に廊下に下ろしていたっていい。たまたまそうしなかっただけなのに褒められてしまった。

「世の中頑張ってる人なんかいくらでもいるよ」

「めーさんもその一人だね」

「褒めすぎでは」






・いき


暖房の効いた教室から寒々しい廊下へと出る。側を歩く人に嫌われるだろうな、と思いつつ窓を開けた。冷えた空気を吸い込む。

人が密集する場所は息苦しい。だから一人、こうして呼吸をする。

「寒くない?」

サナが隣にやってきて、寒そうに腕をさする。ミズキがいるところにはどこにでもついてくる。






・友達未満


本を読んでいようが勉強していようがお構いなしなのだった。彼女は今日も元気に話しかけてくる。

「レポート進んでる?」

「だいたい書けたよ」

「すごいね」

邪険にするのも既に飽きた。無理やり追い払うよりてきとうに相手をする方が楽だと気付いて、大学に入って初めての友人らしきものができた。






・整備士とおおきな子ども


片方の腕が外れている間も彼女は器用に残った片手で本を読んでいる。光を反射しない漆黒の義手を整備する傍ら、背後の女に声をかける。

「肌の色にしないの?目立つのに」

「私にくっついてるのが紛い物だって忘れないように」

「ふーん」

「あと、カッコいいから」

無邪気で楽しげな含み笑いがした。





横書き表示推奨。2021.02.24から2021.03.02までにTwitterへ投稿した約140字の創作百合小説をまとめました。

最終更新日・2021.06.21

・禁煙(元教師と生徒の百合)

・恩讐(執着し続ける女とされ続ける女)

・狩人のお弟子さん(魔物狩りの女が双子を拾う話)

・褒め上手(よく褒める女と褒められる女)

・いき(教室を息苦しく感じる女たち)

・友達未満(友達のようなそうでないような女たち)

・整備士とおおきな子ども(義肢の整備士な歳上女と顧客の片腕義手歳下女)


「pixiv」と「小説家になろう」にも投稿しています。

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