4・Twiiterでほぼ毎日投稿、当サイトでの更新は不定期

・用心棒とご主人様


「あんたほんとめちゃくちゃだな!」

死体に寄り金目のものを剥ぎ取りながら彼女は言う。

「めちゃくちゃ」は人から散々言われてきたことで、少なからず不愉快な思いもしてきた。けど彼女に言われるのは嫌じゃない。

「でも最高」

「でしょ?」

何故なら褒めてくれるから。そんな人は今までいなかった。






・厭世家の異形狩


「私は別にどうでもいいの、人類が滅びるとか世界が終わるとか。むしろ滅べばいいと思ってるし終わればいいとも思ってる」

なら何故抗うのだ、と異形の目は語っていた。言葉が通じなくても考えてることがわかるものなのだな、と不思議に思った。

「あの人はこの世界を愛してた。理由はそれだけで十分」






・小さなハデス


別命あるまで標的から照準を外すことなく待機する。主人の声一つで、今スコープ内に囚われている者の生死が決まる。人生とはそんなものだ。

今この瞬間あの人間にとっては主人が冥界の王であり、彼女は手先となる死神といったところか。

「fire」

インカムからの感情のない声と共に、引鉄を引いた。






・犬は喜び駆け回り


「今でもけっこうできるもんだ」

彼女は軽々とリフティングしてみせた。怪我してサッカーを辞める前の、ユニフォームを着てフィールドを駆け回るいつかの彼女の姿と重なる。

「やっぱマネージャーやる気はない?」

「元気な選手見てるとしんどい。ごめんな」

弾むボールを見る彼女は寂しそうだった。






・死なないキミと二人旅


「あー痛かった」

胸を剣で貫かれたまま彼女はのそのそ歩き出す。剣の持ち主は頭が真後ろを向いた状態で倒れている。

「ごめんこれ抜いて」

渋々柄を握り、容赦なく剣を引き抜く。熱い鮮血が顔や服に飛び散った。

「汚れちゃったね」

街に出る前に洗わねば、彼女ともども警察へ突き出されるだろう。






・運び屋と少女


彼女は目的地まで送り届けなければならない荷物だ。変に情をかけても仕方ないから最低限の会話にとどめたいのに、彼女はお構いなしに話しかけてくる。

「出身は?」

「西方」

「好きな食べ物は?」

「腹一杯になればなんでもいい」

子どもは苦手だ。口には出さずに、背後からの質問攻めに対応する。






・ルームメイトは冥界出身


「落ち着けっての!」

毛むくじゃらの巨体に触れ、慣れない大声で呼びかける。幸い声は届いたようで、巨体は徐々に縮み、体毛も薄くなり、やがてヒトの形をとり「彼女」の姿となる。

「ビビった?」

「え?」

「私がケルベロスだってこと、お前は忘れてる。だから定期的に思い出させてやるんだ、人間」






横書き表示推奨。2021.01.11から2021.01.18までにTwitterへ投稿した約140字の創作百合小説をまとめました。

最終更新日・2021.03.03

・用心棒とご主人様(主従、大人と若者)

・厭世家の異形狩(先立たれ百合)

・小さなハデス(主従、子どもと大人)

・犬は喜び駆け回り(サッカー選手と怪我した元サッカー選手、女子大生)

・死なないキミと二人旅(不死者と人間)

・運び屋と少女(若者と子ども、逃避行)

・ルームメイトは冥界出身(人間と人外)


「pixiv」と「小説家になろう」にも投稿しています。

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