5・Twiiterでほぼ毎日投稿、当サイトでの更新は不定期

・ライドオン


地に足がつかないのに地面と未だ繋がってるという不思議な安心感。馬上から見る景色は自分が知るものよりずっと高く、広い。

「案外悪くないでしょ、お馬さん」

「……うん」

「うちに来てくれたらいつでも教えてあげるから」

手綱を握る彼女の背中は逞しい。泣き虫なちびっこはどこにもいなかった。






・境界


「甘えてくれてるの?」

「そのつもり」

なんの捻りもなく返されてしまい少し動揺する。年明けの浮かれた空気が彼女の口を軽くさせているようだった。

「君はなんか、ちょうどいいから」

彼女はすっかり身を預けている。電車が揺れるたび彼女の質量を感じる。ガラガラの車内で、そうして身を寄せ合う。






・私の白兎


彼女の話は雲を掴むみたいに不確かで、地に足のつかない落ち着かなさがあった。だけど不思議なことにずっと聴いていたくなる。ここではないどこかへ彼女となら行ける。そう思わせてくれた。

これはいわゆる走馬灯というやつだろうか。彼女という白兎を追いかけおっこちた穴は、思いの外深く、暗い。






・裸の付き合い


「どうも」

なんとなくあいさつする仲にはなった。だけど知人以下の関係。早朝の銭湯でよく顔をあわせるだけの相手。

夜勤労働者か、単に朝風呂が好きな人なのか。歳は近そうだ。銭湯の客に若い人は珍しいのでよく目立つ。

仲良くなるより先に裸を見てるなんて考えればちょっと面白い関係だなと思う。






・幸せリフィーディングシンドローム


「少しずつ私に慣れていって」

苦しくない、かといって温度の希薄さに物足りなさを感じさせるわけでもない。絶妙な力加減で彼女に抱きしめられていた。優柔不断な腕は空を彷徨い、ひとまず雨宿りするような心許なさで彼女の身体を包む。

匂いや、存在感、あっぷあっぷと地上にいるのに溺れそうだった。






・不信心ガールズ


「神の沈黙のもと生き延びた私がいる限り、神の不在は証明され続ける」

「ちげーよバカ。信じてる私がいる限り、カミサマはいるってことになんの」

「なら私を殺す?」

「そ。悪魔はみーんな殺すよ」

悪魔は笑顔だった。異端審問官はむっつり無表情。彼女も自分も昔と変わらない。心中ひとりごちる。






・料理の時間


「こんなクソ狭キッチンの家によく住もうと思ったね」

「家賃安いし、普段料理しないから」

だるそうにフライパンの前に張り付く彼女は今自分のために料理をしている。その事実だけでなんだかむずむずしてしまう。

「味は期待しないで」

「してないから大丈夫」

「腹壊すかもよ」

「それは困るな……」






横書き表示推奨。2021.01.11から2021.01.19までにTwitterへ投稿した約140字の創作百合小説をまとめました。

最終更新日・2021.04.08

・ライドオン(幼馴染百合・泣き虫だった厩舎の子と彼女を守ってきた子)

・境界(友達以上恋人未満百合)

・私の白兎(不思議な女の子と普通の女の子と異世界もの)

・裸の付き合い(社会人百合)

・幸せリフィーディングシンドローム(幸せ慣れしてない人と甘やかしたい人)

・不信心ガールズ(異端者と異端審問官)

・料理の時間(生活が雑な女とその友達)


「pixiv」と「小説家になろう」にも投稿しています。

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