再会

ちえ。

再会

 桜並木の街路。緑映える丘の上。通学路の落ち葉拾い。遠くに凍る雪の湖。

 幼い頃を過ごしたこの町に、十年ぶりに帰ってきた。


 住んでいたのは高台にある一軒家。隣に並ぶ同じような家に幼馴染の直緒なおがいた。

 公園でどろんこになって遊んだ日。おままごとから始まるヒーローごっこ。

 あの頃の思い出は、いつも直緒に占められている。


 そして今も、直緒の笑顔は俺の心を占めていて。

 すぐに顔が見たくて、明日から通う高校への坂道を駆け上った。


 ちらほらと制服姿が通る道。彼女の面影を探して駆け巡る。

 十年ぶりの彼女に気づく事が出来るのかと。その時ようやく頭に浮かんだ。

 坂の上にある学校が見えると、夢を夢だと思い知らされた気がして足が竦んだ。

 立ち止まり、肩を上下して荒い息を吐く。白い息が痛くて苦しい。


 諦められなくて、涙が滲みそうな目元をぎゅっと引き結んだとき。

「ゆーくん?」

 こわごわ降る声に顔を上げる。

 そこには夢に見た笑顔があった。

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再会 ちえ。 @chiesabu

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