第9話 未だに不安定な心
ごり押しは通じないと恋心ちゃんは諦めて俺に対してこの様に話した。
これからは比較的真面目に貴方を落としますと、だ。
俺は変わり様にかなりビックリしたが。
まあそれなら良いかと思い.....恋心ちゃんに任せた。
だがそう思ったのが甘かった。
恋心ちゃんはエッチな事をしなくなったが積極的になった。
別の意味で、だ。
アタックが激しくなってきた。
夢と恋心ちゃんの母親が違うと俺が知ったりしてから、だ。
「義兄さん。今週の土曜日にデートしましょう」
「.....え?いや。え?」
「嫌とは言わせないですよ。だって日曜日にお姉ちゃんとデートしますよね?知っていますよ。飛鳥先輩に焼きそばパンを渡して聞きましたから。断ったら大変ですよ?義兄さん.....」
脅しに掛かってくる恋心ちゃん。
あのクソ馬鹿。
焼きそばパンで買収されたのかよ、と思いながら俺は額に手を添える。
そして俺は恋心ちゃんを見つめる。
ニヤッとしている。
「お姉ちゃんと同じタイミングとはいきませんが徐々に詰めていきますからね」
「.....そ、そうか.....うん」
「.....それで結ばれた暁にはあんなことやこんな事を.....」
「.....おいおい.....」
俺は苦笑いを浮かべる。
恋心ちゃんは悶えながら俺を見てきていた。
その事に俺は顔を引き攣らせる。
そして首を振ってから直ぐに話を切り替える様にして恋心ちゃんを見る。
「.....恋心ちゃん」
「はい?」
「俺は応援は出来ないけど.....まあ頑張れ」
「はい。.....アハハ」
恋心ちゃんは柔和な笑みを浮かべて俺を見てくる。
俺はその姿に溜息を吐きながら恋心ちゃんの頭に手を添える。
そして俺は、ちょっと下に降りるから、と席を外した。
それから下に降りて行くと。
夢が鼻歌交じりで料理をしていた。
高末さんはどうやら.....お風呂の様だ。
母さんは洗面所か。
「夢」
「.....あ。太一郎。どうしたの?」
言いながら俺は夢を優しく抱き締めた。
それから.....そのまま頭をポンポンする。
そして.....笑顔を見せる。
夢は、え。え!?、と驚愕しながら目を丸くして赤面した。
「有難うな。何時も何時も」
「私は.....何もしてないよ?」
「でもお世話になってる。だからこうしてハグしている」
「.....も、もう。お父さんと美久さんに見られたら大変だよ?」
「俺はお前を愛しているから問題ない」
もー。
そんな問題じゃ無いよー。
と言いながらも全然嫌な感じを見せずに。
俺のされるがままになっていた。
そして俺達は見つめ合う。
「.....このままキスでもしちゃう?」
「.....それはマズいだろ。母さんも高末さんも居るから」
「アハハ。だね。じゃあまた今度にお預けだね」
「ああ。でも愛してる」
「うん。私も」
そして俺は、何か出来る事は有るか?、と聞いた。
すると夢は首を振る。
それから俺に笑みを浮かべた。
勉強していたんだよね。大丈夫だよ、と、だ。
う。
何というか勉強していたらいきなり恋心ちゃんが来たとは言えないし。
脅されてデートをする事になったとも言えない。
どうしたら良いのだろうか。
思いながら俺は冷や汗をかきつつも咳払いして気を取り直した。
「.....勉強も大変だよな。全く」
「そうだね。.....あ、それと。.....恋心と仲良くしてくれて有難う」
「.....え?」
「.....不安だったんだよね。私。この家で上手くやっていけるかどうか。.....私と恋心は母親が違うから」
「.....そうか」
俺は少しだけ笑みを浮かべながら夢を見る。
夢は俺に柔和に笑みを浮かべていた。
それから母さんが戻って来る。
あらあら仲良しね、と言いながら、だ。
「私は太一郎君を慕っていますから。美久さん」
「俺も慕っているからな」
「.....仲が良いのね。.....何だか嬉しいわ。そんな感じだと。不安だったから」
「そうなんだね」
俺はその様な返事をしながら。
少しだけ夢から離れた。
あまり親密にしていると逆におかしいしな。
思いつつ.....母さんを手伝う。
「あら。有難う」
「うん。.....夢。何か出来る事があったら言ってくれ」
「そうだね。太一郎君」
そして夢は料理を始めた。
俺はその姿を見ながら.....母さんの手伝いをする。
洗濯物を畳む。
そうしていると.....母さんが俺に向いてきた。
「色々あるけど.....大丈夫?今は」
「.....え?どういう意味?母さん」
「高末さんから聞いたのよ。貴方に色々と話した事。あ、夢ちゃんに気が付かれない様に小声で話してね」
台所をチラ見する。
そこでは夢が一生懸命に料理を作っていた。
真剣な感じである。
気が付いてない様だ。
「.....夢ちゃんも恋心ちゃんも.....兄妹じゃないからとかで嫌わないであげてね」
「.....当たり前だろ。家族なんだよ。母さん。守るに決まっている」
「.....本当に優しい子に育ったわね。貴方は」
「.....母さんのお陰だ」
そして俺は笑みを浮かべる。
母さんも柔和な顔を浮かべて.....涙を拭った。
それから俺の頭を撫でてくる。
俺は.....少しだけ赤くなりながら頬を掻く。
「.....貴方は優しいからその優しさが仇にならない様にね」
「.....だね。母さん」
そんな会話を続けていると。
夢が、御免なさい太一郎君。ご飯が出来たので恋心を呼んできて貰って良いですか、と穏やかに見てきた。
俺はその言葉に、ああ。分かったよ。夢、と返事してから。
母さんと夢に返事してから2階に上がる。
恋心ちゃんの部屋のドアをノックすると。
クスンクスンと泣いている声がした。
俺はビックリして直ぐに、大丈夫か?、と声を掛ける。
『義兄さん.....』
「.....どうしたんだ?恋心ちゃん」
『いえ.....何だか.....このまま勝てるのかと不安になってきて涙が出たのと.....お母さんの事を思い出して涙が出てきて.....』
「.....!」
俺は驚きながら、入っても良いか、と許可を貰ってドアノブに手を掛ける。
恋心ちゃんは、はい、と返事をした。
それから俺はゆっくり入る。
そこには.....涙を流している恋心ちゃんが居た。
「馬鹿ですね。私。何だか義兄さんから.....お母さんの事を聞いてから.....という感じでそれなりに精神が不安定になっちゃって」
「.....成程な」
「.....だからその.....かなり不安な思いになっちゃって.....あんなに強がっていたにもかかわらず、です。何だか.....うん」
「.....」
クスンクスン言いながら恋心ちゃんは涙を拭う。
守り切れるだろうか。
俺は.....この笑顔を、と。
その様に思ってしまった。
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