第8話 高末が語る全て

「考えは変わりましたか」


山代に呼び出された。

学校に行ってからホームルームが始まる前の事だ。

俺は.....山代を眉を顰めて見る。


山代は俺をジッと見てくる。

瞬きさえも無いぐらいに、だ。

ため息混じりに俺は答えた。


「考えは変わらない。俺は夢と別れる気は無いよ」


「.....そうですか。じゃあ.....」


「だけど俺な。.....お前の気持ちが分かった気がする」


「.....はい?」


山代は俺をジッとまた深く見てくる。

俺は.....昨晩の事を思い出す。

何故コイツが夢を嫌っているのか、そして俺に何故に恋心ちゃんをくっ付けようとしてくるのか。

本当に何となくだが分かった。

俺は.....山代を静かに見据える。


「お前さ。.....母親が違うって事を知っているだろ。恋心ちゃんと夢の」


「.....そうですね。それがどうしたんですか」


「.....それでお前が何だか夢を嫌っているのが分かったんだ。でもな。恋心ちゃんはな.....変わるって言った。だからお前の無理矢理の行動はもう誰も称賛しないぞ。こんなごり押しは」


「.....でも私はそれでも!」


そこまで必死めいて山代が言うと山代の背後から恋心ちゃんが、山ちゃん、と言いながら現れた。

そして、もう良いよ、と言ってくる。

山代は驚愕しながら俺も見開きながら。

恋心ちゃんを見る。

そして恋心ちゃんは前に出て来た。


「.....私ね、山ちゃん。考えたんだよ。そしてちょっとだけ改心したんだよ。義兄さんから誘惑したいのは変わらないけど、私は私なりに進むから。だから無理矢理にしなくて良いんだ」


「.....恋ちゃん.....」


「私は義兄さんが好き。でも無理矢理にはしない。.....私は義兄さんを振り向かせてみせる。だから山ちゃん。手荒い真似はもう良いよ」


「.....で、でも私は.....貴方を思って.....」


「有難う。山ちゃん。えっと.....義兄さん」


何だ、と俺は向く。

すると恋心ちゃんは.....笑みを浮かべた。

それから.....山代の手を引く。

ご迷惑をお掛けしました、と、だ。

そして頭を下げた。


「.....でも義兄さんが好きなのは変わらないですから」


「.....!」


「.....でも一旦は引きます。山ちゃんに説得してきます」


「.....お前がそう言うなら見守るよ。恋心ちゃん」


そして、行こう。山ちゃん、と手を引きながら。

そのまま去って行った。

俺は.....その姿を見送ってから教室に戻る。

すると.....ジト目の飛鳥と。

クラスメイトが待ち構えていた。


「お前、何を話していた。美少女軍団と」


「.....いや、お前.....軍団って」


「夢さんという女の子が居ながら.....お前という屑は!!!!!」


もはや漢は居らぬ!攻撃じゃー!!!!!

と俺は襲われた。

そのまま飛鳥に首を絞められる。

ぐあ!何すんだお前ら!!!!!

俺は暴れながら抵抗する。


「もー。山寺君!妹と話していただけじゃない」


「駄目ですよ!もしかしたら浮気かもしれない!」


「え?そうなの?太一郎」


「そんな訳あるか!」


っていうか馬鹿ばっかりだな!本当に!

美少女なのは偶然だって話だ!

全くもう!!!!!

と思いながら俺はホームルームが始まるまで逃げていた。



5時限目の休み時間の事だ。

俺に夢が寄って来た。

そして笑顔で話してくる。


「太一郎。今週のデートだけど」


「どうしたんだ」


「参考書も探さない?一緒に行くつもりの大学の」


「.....ああ。そうだな」


来年の事を考えないとな。

思いながら.....俺は顎に手を添える。

それなりには頑張ってはいるが県立だもんな。


気を付けないと.....。

オープンキャンパスとか行ったけど大学の事も詳しく知りたい。

思いながら顎に手を添える。


「じゃあ本屋巡りの主なデートだな」


「そうだね。楽しみだね。アハハ」


「お前のとのデートは毎回楽しいよ。本当に」


すると、ヘイヘイお二人さん、と声がした。

見ると飛鳥がサングラスを掛けている。

何をしているんだこの馬鹿?

思いつつ飛鳥を見る。


「今度出来たカフェを紹介すっぜ。ハハハ」


「.....何でグラサン?」


「当然!ようちぇけなー」


「.....ラップ風に紹介って事か.....」


「そうだぜ!.....つうか妬ましいから気を引こうとしているだけだぜ!」


本音が丸見えだな!!!!!

俺は盛大に溜息を吐きながら飛鳥を見る。

飛鳥はグラサンを外して、まあ良いじゃねーか、と話す。

それから、でもデートにはうってつけだと思うぜ、とニヤッとした。


「この街の少し行ったところだ」


「へえ。詳しいね。山寺君」


「.....まあ行ってみて良かったからですね」


「そうなんだ。.....じゃあ太一郎、そこに行こうか?」


「それもそうだな」


俺達はデートをくみ上げながら。

そして.....俺は恋心ちゃんの事を考えながらデートプランを練る。

それから授業が始まった。



帰宅すると珍しく会社が早く終わったと高末さんが居た。

俺達は驚きながら.....夢が用事で自室に行ったのを見計らってから。

まだ帰って来てない恋心ちゃんが帰ってくるまでと思いながら。

高末さんに向く。


「高末さん」


「.....ん?何だい?」


「.....母親が違うらしいですね。恋心ちゃんと夢の」


「.....!.....それは.....誰に聞いたんだい?」


「.....夢です」


そうか夢が、か。

と少しだけ自嘲気味な感じで笑う。

俺はその姿を見ながら.....顔を顰める。

そして.....高末さんが語り出した。


「.....僕の奥さんは.....3人目だ。.....初めの頃の夢の母親は.....交通事故死してね。っそれから再婚して恋心が産まれたんだけど.....すい臓がんで亡くなってね。それで今に至っているんだけど.....」


「.....そうなんですね」


「.....僕は君の事も聞いたよ。太一郎君。大変な人生だったね」


「.....俺は別に。でも.....夢と恋心ちゃんが.....大変な人生だったんですね」


「君は優しいな。本当に」


僕が見込んだ男だ。

と笑みを浮かべて.....少しだけ俯く。

それから.....苦笑した。

そして、でもね、と言葉を発する。


「.....僕は夢も恋心も君も。家族だと思っているから。.....だから僕を本当のお父さんと思ってほしい」


「.....!」


「.....僕は君に父親として呼ばれたいなって思っている」


「.....分かりました。.....お父さん」


有難う。君なら言ってくれると思った。

と笑顔を見せる高末さん。

俺は.....その姿を見ながら.....外を見た。

そして.....胸に手を添える。


「でも突然.....何でその話を?」


「.....いえ。ちょっと理由があって。でも.....深い理由は無いです」


「.....そうか。.....僕みたいに人には秘密が一つや二つはあるし.....聞かない様にしようかな」


「.....有難う御座います」


俺は頭を下げる。

夢も恋心ちゃんもみんな.....大変なんだなって。

恋心ちゃんも夢も.....支えていこう。

思いながら.....俺は決意を新たにした。

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