真夜中の病院

 うちのおじじわんこが、3時ころからオエオエしててですよ。またのたうち回っててですよ。お腹はトラフグでですよ。

 確か、夏場にも同じことが一度あって。その時は胃拡張で息が吸えなくなって酸素化悪くなってて。病院で胃菅入れて脱気してもらったんですよね。

 ってことで、ちょっと宥めたりさすったりしてみたけどこれはダメだ、ってことで。夜間救急動物病院へ行ってきました。


 人間もペットも、歳を取ると一緒ですね。

 介護もいれば、思わぬところで医療もいる。いつ何時、何が起こるかわからない。


 うちのおじじわんこは、一号より年上で今年16歳。立派な老犬です。

 可愛い内股は、変形性膝関節症だろうなーと思うし、認知症も入ってるし。時々いろんなところで失禁してるし、酷ければおしっこ塗れになっても、大を踏んづけても気づいてない。平気でおしっこした敷物の上で寝てたりします。足が弱いから、床で滑って立てなかったりすることもよくあります。

 先は長くないわんこです。だから、楽しくやってくれればなぁと思ってるんですけども。大好きな言葉は「肉」と「からあげ」ですしね。そこそこ幸せそうで何よりなんですよ。


 それで、お腹がパンパンなのは治療なしではどうしようもないだろうって、夜間の救急動物病院に連れて行ったんですけどね。

 で、今回は経皮で、つまり体の外からぶっすりと針を刺して脱気したんですけどね。

 吐いた時に誤嚥したようで、けっこうがっつり肺炎を起こしてるってことで。酸素がないとダメな状態で、ICUなるものに入院してきました。


 動物病院にもICUの時代。透析もあるらしいですもんね。

 点滴して、モニターつけて、点滴してるからカラーされて、酸素ルームです。

 今回は、発症から早くてまだ採血上炎症反応が上がってない状況でした。


 採血を取って、何かしらの炎症があるときにあがる炎症反応。

 白血球(WBC)とCRPがメジャーでしょうか。後は白血球分画とかもありますが。

 雑に言えば、細菌性の炎症が起きるとWBCが先に上がり、それからCRPが遅れて上がってきます。今回は、WBCは正常値、CRPは0。つまり、なう炎症中。

 いや違うな。肺炎像が起きる誤嚥は起きてる(肺の中の異物はある)けど、今から炎症(細菌と戦うために腫れたり分泌物が増えたり)が酷くなって、肺の機能がより障害されるだろうって状態かな。

 ってことで、今のところベストなタイミングで病院に入院はしているのですが。


 高齢者の死因の上位に居続けている肺炎。それも、超高齢者の肺炎のほとんどが誤嚥性肺炎。これは大丈夫とも言えない状態。

 まぁ、救急の先生は三日ぐらい入院が必要になると思いますと言っていたので、今のところは早期に入院、治療開始したので治る見込みなんでしょうが。

 正直、これだけの高齢犬なので。治らない可能性もあると思ってます。


 うちには昔、もう一匹わんこがいたんですけどね。

 ちょっと癇癪もちの、アホな女の子でした。享年は10歳ちょっと。

 乳がんからの、全身転移でした。

 この時、治療についてちょっと悩みました。

 抗がん剤をするか、サプリ(まだ薬と認められてない抗がん剤の内服薬)をするか、何もしないで対症療法だけするか。

 抗がん剤を何度かしたんですけどね、吐き気が強くて。完治はしないのだから、副作用が出ない程度のサプリに切り替えたりしました。

 最期は、私が働らいていない時期だったので、側にいられたし、なんでもしてやれました。

 呼吸が苦しくなったら酸素テントまで提案されたんですよ。本当に、今は動物への医療って、人間とそんなに変わらないんだなーって思います。



 こういう時に、いいのか悪いのか。

 私は、人間に関しては医療の知識があるので何となく理解できるんですよね。

 理解できるから、選択できるのかもしれない。深く考えることはできる。

 でも、わんこですから。

 私の子供時代くらいの昔は、調子が悪くても寝かせて様子見るくらいだったでしょう?

 医療の手がどこまで入るのが正解か、ちょっと悩んだりします。


 特に、こんな高齢犬ですと。頑張って、治療して、それでまた繰り返す。それすらも延命の一部なのかなって。

 いやまぁ、まだ繰り返してないですけども。

 本人の意見を聞くことはできないですしね。


 本当の意味の「自然」では、もう寿命だったのかもしれない。

 でも、私は何となく起こってることが分かって、こう治療すれば治るかもしれないって知っている。

 線引きが非常に曖昧というか。

 何もわからなかったら「どうしてでも助けてください」か、「しかたないですね」ってなるのかもしれないけど。

「もしかしたら、こうすると少し良くなるかもしれない」って思うと、少し医療に肩入れしてしまうんじゃないかなーと。

「そこまではしなくていいです」ってレベルが、ちょっと高くなってるのかもしれない。っていうか、そうじゃなければ夜間救急とか連れて行かなかったんじゃないかな多分。


 わんこにとって、延命って好ましくないんじゃないかって思うんですよね。

 人間だから、辛くても苦しくても我慢できることってあるんじゃないかなって。

 だけど、治療でどうにかなるもので苦しんでるのを見てるのも嫌だし。

 選択って、難しいですね。

 いや本当はうちのおじじは、一食でも多く美味い肉が食いたいのかもしれないけど。そこんとこは、わかんないけど。



 てなことで。

 今日は臨時でお休みとなりました。だって、夜間救急病院だから本当は朝の5時で終わりなんですよ。でも、酸素がきれないから、朝になって他の動物病院が空いたら転院ってなことで、移動させないといけないんですよ。

 ペットを入院させるからお仕事休みますなんて、いけしゃあしゃあと……言いましたけどね。だって、ペットの調子が悪いから休みますは言えなくても、迎えに行って他の病院に入院させないといけないって、もうそれ免れないやつですもん。

 これはきっと、仕方ないで通る。うん。


 しっかし、寝て1時間で起こされて私は既に疲労困憊でござる。

 あと、医療費が恐ろしすぎる……ママンは働くしかない。

 夜間診療費が8800円に、レントゲン5500円×4枚に、採血に、脱気に、ICUに、点滴に、入院費1時間6000円。タクシー代の往復も7000円かかったし。それからまた迎えに行って、他の病院に入院させるってなれば、軽くボーナスは吹っ飛ぶ………。

 でもまぁ、仕方ないですね( ;∀;)うちの子だから。

 ご老体には医療費もかさむ。これも、人間と同じですよねぇ。


 ああしかし。もうひと働き、バタバタしなければ。頑張ってきまーす。

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