第2話
僕はその後、三年生を迎えるにあたり教師と親の両方から、進路をどう考えるのかと聞かれた。
相変わらず僕の保健室登校は続いていたから、彼らも恐る恐るといった様子だったけど、僕は迷わず「進学したい」と答えた。
あの後すぐに僕たちは連絡先も聞かないまま別れてしまったけど、頭の片隅にはずっと遥の事があった。進学する、星について学びたいと言っていた彼女の言葉が耳に残っていた。このまま高校にも行かずに終わってしまったら、もう二度と彼女に会う事もないのだろうなと思った。
彼女と出会えた事で、もしかして全く知らない人相手なら僕は元通りの生活を送れるんじゃないかという可能性を感じたのも一つの要因だった。僕がみんなと同じように学校生活を送れないのは、この学校だからなのかもしれない。僕の事を知っている人が誰もいない学校に行けば、僕は普通の生活に戻れるんじゃないかと思った。
三年生に上がっても保健室登校は続いたけれど、その代わり僕は誰よりも勉強した。これまでの遅れを取り戻すべく、一生懸命頑張った。そんな僕を、先生や両親は喜んで応援してくれた。
翌年の春、僕はめでたく隣県の高校へと進学した。そこそこの進学校だった。僕が望んだ通り、同級生には誰一人として僕を知る人間はいなかった。
不安に思う両親の過保護なまでの支援を受けながらも、僕は実家から離れて寮生活を始め、程なくして周囲の輪に溶け込んでいった。友達もでき、クラブ活動や委員会にも精力的に参加する普通の学生生活を取り戻したのだ。
大学進学に際して、僕は東北にある国立大学を志望した。
そこには天文学を学べる学科があるというのが、一番の理由だった。
あの夜、たまたま父に連れられてふたご座流星群を見に行った結果が僕の人生を大きく変えた。その後の人生の中でも、それ以上に僕のターニングポイントとなった経験はなかったから、必然的に僕は天文学を学びたいと思うようになっていた。
もちろんそこには、もしかしたらまた彼女に出会えるんじゃないかという希望がなかったと言えば嘘になる。
天文学を学べる大学は日本中探しても数えるほどしかない。もし遥がその後も星を学びたいと思っていたとするなら、同じ大学に進学する可能性は大いにあった。
しかし結果から言ってしまえば、僕の大学四年間は、一度も彼女を見つける事ができずに終わってしまったのだけど。
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