第32話 山頂の日の出
「はははっ、そんな大袈裟過ぎだろ」
「本当だよ! なんていうのかな……自然の雄大さみたいな? とにかく、山頂から日の出を見ると、悩みなんて吹っ飛んじゃうんだよ!」
「へぇ。そこまで言うんだったら、じゃあ今度連れてってもらおうかな」
「うん! ぁ、でも山は危ないところだから、ちゃんとしっかり準備してね!」
「おうよ」
「──きて。おはよー☆ おきて♪」
「む……わりぃ、寝てたわ」
「ほら、もうすぐ日の出だよ! 折角ここまで来たんだから、ちゃんと目を開けて!」
「おうよ」
その直後。朝日が顔を出したと思ったその次の瞬間、世界は色付き一変した。
その光景をなんと表現したら良いのか、俺には分からない。
「……綺麗だ」
「でしょ?」
辛うじて絞り出したその一言に、相方は満足そうに笑った。
こいつの言った通りだった。
大自然の圧倒的迫力。そのパラノーマルですらあるパノラマを前に、俺はただただ呆然とした。
嗚呼、ちっぽけだ。俺はなんとちっぽけな存在なのだろう。そのちっぽけな俺の抱えている悩みもまた、ちっぽけで取るに足らないものなのだ。
これは、俺の完敗だな。地球に乾杯☆
それにしても、本当に綺麗だ。この世のものとは思えない。まるで、夢を見ているようだ──
「──おきて! ねぇ、おきて! こんな吹雪の中で寝たら死んじゃうよ! お願いだから目を開けて!」
彼の体はすでに冷たく、血の気が失せていた。けれどその表情は、不思議と晴れやかだった。
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