第30話 おはよー☆とおきて♪を科学する

 それは世紀の大発明になるはずだった。


 『おはよー☆おきて♪システム』──地球上全ての人間が毎朝決まった時間に起床できるようにするシステム。地球の巨大な地場を利用することにより、如何なる受信機器を介することなく、全人類の脳に特定の信号が直接送られることでそれは実現された。


 初めは誰もが喜んだ。


「これで寝坊する心配なはないぞ!」


「徹夜でゲームができる!」


 しかしすぐに、このシステムには欠陥があることが露呈された。

 ある種の信号を脳に直接送り込まれ続けた結果、人々は錐体外路に支障を来し本人の意思とは関係なく無意味な言葉の羅列を放つようになった。


「あばばばばばばば」


「あばばばばばばば」


 その危険性に気付いた科学者たちはすぐにシステムを停止させたが、時すでにお寿司。このとき地球上に存在した全ての人類は皆、同じ後遺症を背負うこととなった。


「あばばばばばばば」


「あばばばばばばば」




 ──それから数十年後。


 この凄惨な出来事の後に生まれ、あばばば症候群の影響を受けることなく育った世代が大人になる頃、この物語は始まる。

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