第28話 不良男子に起こりがちなこと

 自分で言うのもナンだが、この俺──高田焔は根っからのワルだ。

 幼いころ両親に捨てられ、人の温もりなど知らずに生きてきた。それなのに……


「焔くん、朝ご飯できたよ! おはよー☆ おきて♪」


 それなのに、この野郎──柊智己は、なんで俺の部屋に居座っていやがるんだ。

 朝メシだと? 余計なモン作りやがって。まぁ、他に食うモンがあるわけでもないし、仕方ないから食ってやるけどよ。


「んっ!? なんだコレ、めっちゃうめぇ!!」


「よかったー! やっぱり、焔くんはこういう味付けが好きだと思ったんだ!」


 こいつ、俺のことよく見てやがんな。人の温もりを知らない俺に、こんな温けぇメシ作りやがってよ……マジでムカつくぜ。


 食後に一服しようとした俺は、煙草を切らしていることに気付いた。


「……煙草買ってくる」


「あっ、ボクも行くよっ」


「付いてくんな。お前みてぇななよっちいのと一緒にいたら俺がナメられんだよ」


 日頃の行いが悪い俺は、外に出ればいつ誰に絡まれてもおかしくなかった。自分の身も守れないようなこいつが一緒じゃ、足手まといにしかならない。


「……すぐ戻る」


 ジーンズのポケットにスマホだけ突っ込んで、俺は部屋を出た。




 全く、俺も何をやってるんだか。


 公園の遊具に腰掛け、煙草を吹かしながら思う。


 あんな奴、今すぐ外に放り出せばそれで済む話だ。

 少し前の俺ならこんなことで悩んだりしなかっただろうに。最近の俺はどうかしてるぜ。


 吐き出した煙があいつの顔に見えた気がして、まだ半分も吸っていない煙草の火を揉み消 した。


「ふぅ……戻るか」




 帰ると、部屋の中は泥棒が入ったかのように荒らされていた。

 わざわざ俺の留守を狙ってこんなことをする連中は、あいつらぐらいしかいない。復讐のつもりか? クソッ、セコい真似しやがって。


 いや待て。部屋の中がこの有り様なら、ここにいた智己はどうなった? あいつは無事なのか?


「……智己っ! おい、智己どこだ!?」


 胸騒ぎがする。まさかあいつらに連れ去られて……クソッ! だから俺なんかと関わると碌なことにならねぇっつってんだよ!


「あの馬鹿ッ!」


 頭で考えるより早く体が反応し、俺は部屋を飛び出していた。

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