第26話 本当に怖くないグリム童話『ラプンツェル2』

 ラプンツェルは塔の外へ出たことがありません。塔の窓から見える景色が彼女の世界の全てでした。


「ラプンツェルや、おはよー☆ おきて♪ 今日も健康ヘルシーな朝ご飯よ!」


 今朝も魔女は、直通エレベータで出来たてほかほかの朝食を運んできます。


「ねぇ、おばあちゃん。私も外へ出てみたいわ」


「ンマァ! なんてこと!」


 おばあちゃんは大層驚きました。そんなわがままを言う子に育てた覚えはないからです。


「ラプンツェルや、外はとっても怖い場所なのよ。もっとムキムキマッチョにならないと、狼に食べられてしまうわ」


「それなら大丈夫よ、おばあちゃん。これを見て!」


 ラプンツェルは服を捲ってお腹を出しました。するとラプンツェルのお腹に、見慣れない機械が付いているではありませんか。


「ヘイ、ラプンツェル! そのイケてるマシーンはなんだい?」


「おばあちゃん! これは先日通販で買った、付けてるだけでムキムキマシーンよ! これさえあれば、誰でもバキバキの腹筋が手に入るの!」


「本当? 信じられない!」


「ならおばあちゃんも試してみて! この強力自動ブルブル機能がインナーマッスルに超効くの!」


「オーマイガー! 何もしていないのに体が熱くなってきた!」


「それが効いている証拠よ!」


「すごい、まるで生まれ変わったみたい!」


「よっ、おばあちゃん! 腹筋が板チョコ!」


「これなら熊も倒せそう!」


「今夜は熊鍋ね!」


「ウフフフ☆」


「アハハハ☆」


 こうして鋼の肉体を手に入れた二人は、毎日外へ出ては縦横無尽に狩りを楽しみましたとさ。

 めでたし、めでたし。

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