あれは何だ!?鳥か!?飛行機か!?もちろん…余d「新キャラだよ」
「それじゃあ奏さん、行ってきますね」
「はい、行ってらっしゃい!」
気分はまるで新婚さん。笑顔で手を振って見送ってくれる人がいるって…素晴らしいことだね!
漫画なんかじゃよく気になるあの子の声援でパワーアップなんてあるけどその通りだね!今ならレベル1縛りでダ○ソがクリア出来そうだよ!もしくは某ストラテジーゲーの難易度天帝がクリア出来そうだ!
ほぉーら、どんどん男の娘パワーが溜まってきたぞ!さて、遅れる前にさっさと会社に行って仕事を終わらせますか!
ファファファ、今日のお昼は何だろうなァー!!!奏さんの愛妻…愛夫弁当の中身は何だろうなァーーー!!!
「あれ?これって…彩音さーーん!待ってーーー!……行っちゃった、届けなくちゃ…」
ーーーーー
ーーー
ー
身体中から力が抜け、とうとう立つ気力も無くなった。枯れた枝のようにポッキリと私の脚は折れ曲がる。
視線を前に向ければ日系ブラジル人の鼓ボビン君が、三段の重箱弁当をいつものように持ってきて物凄い勢いで食べている。
彼は何故いつも重箱なのか、彼の家系事情と胃袋はどうなっているのか謎である。
歴戦の傭兵のような面構えをしているが、何と驚きの新社会人。今年入社してきたばかりの18歳である。
社長曰く、『鼓ボビン…ね。君にミドルネームを付けるならK…かな。何故かって?鼓、ボビンときたらケーブルドラムだろ!!なはははは!!!君面白いから採用だ!』とのこと。
とても失礼な社長である。それにケーブルドラムはKではなくCだ。
こんなことばかりしている社長だが、このよくわからない企業をよくわからないもののシェア率世界1位でよくわからないうちに大企業にした凄腕である。
この会社自体も、社長自身も本当によくわからない。この前なんか家庭科で使う銀色のおっさんを大量に開発してたり、刺身の上にタンポポを全自動で載せる機械を作ったり、需要があるのか怪しいものまで。
ちなみにボビン君は超有能である。新人達の中では1番初めに昇給するだろう。2メートル近い彼が縮こまって小さいキーボードを叩いているのは意外とシュールで面白い。
いや、ボビン君や社長の話は今はどうでもいいんだよ!私は今人生の岐路に立たされている。
いつだって世の中はそうだ。我々に厳しい選択を強いる。絶望の淵に立たされるどころか突き落とされることなんてしょっちゅうだ。
少しでも慢心した瞬間神々はいつも突き放す(圧倒的責任転居)
まさかこの私がコンビニ飯を買わなければいけないのか?私のジャンキーな舌は受け入れるだろう。
しかし心が虚しい。私の為に献立を考え私の健康の為に1グラム単位で健康を考えられたあの愛妻弁当を食べずにコンビニ飯に浮気しろとな。
否!そんなことなどあってはいけないのだ!コンビニ飯?私の舌は許そう、だが矜持が許すかな!
そうは言ったもののどうしたものか… 時間はあるけれどとても家に行ってここに帰ってくるだけの時間ではない。
ここは奏さんに連絡すべき…か?そう思い携帯を握りしめるが連絡するのを止める。
迷惑をかける訳にはいかないのだ…(今更)
空腹で午後仕事するのはとっても辛いのだ… あーあやっちゃったね彩音さん。
1人脳内で小芝居をしていたら一件メールが来ていたことに気づく。
こ、これは…?!
[彩音さんお弁当をお家に置いて行ってしまったみたいなので届けに行きますね。お昼頃には到着します]
神!女神!!奏!!!世界が産んだ地上の女神や… そしてこのあり方はまさしく新婚夫婦ではないか!世界が私たちの結婚を祝福してくれている!!
さあ行くとしようっ!!愛しのマイハニーの元へ!!!
ーーーーー
ーーー
ー
圧倒的エントランス!人が受付以外いないぜ!!少し早く着いてしまったのかな?まあ例のアレをやるチャンスだし良しとする。
『ハァ…ハァ… すいません、お待たせしました彩音さん』
『いいや、今来たところさ。マイハニー』
そう、これである。隙あらばイケメンムーブを決めていくスタイル。
効果、相手は落ちる。さあ、私の心の準備は出来た!いつでも来るといい!
…ん?声が聞こえる?
「あ、光さん!お久しぶりです!」
「奏くんか、久しぶりだね」
知らないメスの臭いがする… なんてふざけてる場合じゃねぇ!奏さんが笑顔で話しかけてるぅぅ!!まずい、まずいよ!NTRはまずいってば!!
あの人は確か…社長の娘の
いったい… いったい奏さんとどういう関係が…
「奏くん、またうちに戻って来ないか?」
「あ〜…」
「華が寂しがっているんだ。それに…」
「キャッ…」
「ボクも寂しいんだ… 君がいなくなってね…」
あぁ〜壁ドンの音〜!!からの顎クイ!!だからNTRはダメですよ!数ある性癖の中でもNTRはまずいですよ!!やばい、目覚める目覚める!!
というか奏さんの反応… 女の子みたいな声出しやがって!!頬を赤く染めんじゃないよ!!
「その… 気持ちは嬉しいですけど… 僕は今違う方のところで働いているので…」
「へぇ… それは誰だい?」
「それは… あっ!彩音さん!」
ぬぉぉぉ… 今気づくのか、今気付いちゃうのか奏さん… 見ろよ相手側の目、生ゴミにたかるハエぐらいにしか見えてないでしょう。
「はい、お弁当です!今度は忘れちゃダメですよ!」
「あ、あはは… ありがとうございます…」
「へぇ… なるほど、君がね…」
「はい!今のご主人様です!」
「えーっと、山奈あ…」
「山奈彩音さん…だったね。君の活躍は聞いているよ。これからも会社の為頑張ってほしい。どうやらお邪魔なのはこちらみたいだからね、大人しく退散するさ」
「あ、はーい」
「奏くんのこと頼んだよ…」
耳元でボソリと囁く光さん。その声には謎の威圧感があった。俺の女に手を出すな的な声であろう。…だが私は負けない。負けるわけにはいかないのだ。
というか主人公が負けるなんてありえないでしょう常識的に考えて。
思わぬところで現れたライバル、それもかなり奏さんと親しそうな人間だ。これから私と奏さんの恋愛はどうなってしまうのか、次回『彩音、死す』お楽しみに。
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