第5話
バスを降りると、私たちのクラスが一番早かったらしく、自分のクラスの人以外は誰もいなかった。そのため、課題マンもとい志村先生は叫びながら走っている。そして、それを見たクラスメイトは引いている人半数、笑っている人半数だった。
私は水稀を引っ張ってサービスエリアの売店へと向かった。
売店へ入るとすぐに、辺りからとてもいい匂いがした。
水稀も匂いに気が付いたのだろう。少しソワソワしながら、私の後ろを着いて来る。
私は何の匂いか気になり、匂いのする方向へ向かってみる。するとそこにはパンケーキやクレープを売っている店だった。
「なあ、冬華」
水稀は突然、私の名前を呼んだ。
「どうしたの?」
「いや、買わないのかなって」
「なに? 食べたいの?」
「違う、違うぞ。決してクレープが食べたいとか……思ってないからな? うん、思ってない」
水稀は少し動揺しながら首を縦に振る。しかしその言動からは、食べたいということが隠しきれていなかった。
「じゃあいらないの? 私は買うけど。あ、このクレープ一つください」
そう言って、一番気になったクレープを指差す。
「いや、食べないとは言ってないぞ? 俺も同じのお願いします」
水稀はツンデレなのだろうか。
私たちが注文をして支払いを済ませると、クレープが出来上がるまで少し待つように促された。私たちはまだ時間があるのを確認し、先生に連絡しないでそのまま待つことにした。
「おお、脳筋達。こんな所にいたのか」
クレープが出来上がるのを見ながら待っていると、突然後ろから声を掛けられた。
「あ、先生」
「先生も何か買いに……って、買いすぎじゃないですか?」
先生に目を向けると、先生の両手には様々な食べ物があった。どうやら、水稀よりも食い意地のようなものがあるらしい。
「すこーーーし買いすぎてな。これ食うか?」
「これって、向かい側にあるアイスじゃないですか。いいんですか?」
「もちろん。ただ、他の人には言うなよ。何を言われるかわからないからな」
「は、はい」
「じゃあ、また後でな。早く戻るんだぞ」
先生はアイスを私たちに渡すと、そう言ってからこの場を去った。
「なあ、冬華」
「どうしたの?」
「これ、多くね……?」
「た、確かに……」
私たちは渡されたアイスの量に震えていると、追い打ちをかけるようにクレープを渡された。
今日は良い天気だ。ただ、良い日にはならないだろう。
また君に会いたくて。 赤坂 葵 @akasaka_aoi
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